日経グッデイ

インフルエンザ総特集

今冬のインフルエンザは「トリプル感染」も心配

高齢者と乳幼児で目立つ「低い抗体保有率」

 三和護=日経メディカル

2016年~2017年シーズンのインフルエンザ流行速報から、知っているようで知らないインフルエンザの基礎知識まで、この特集で一挙解決! インフルエンザ流行マップはこちら毎日更新中です。

 今冬のインフルエンザで「3回罹患する人が出てくるかもしれない」という懸念が浮かんできた。いわゆる「トリプル感染」だが、一体どういうことなのか―。

 「トリプル感染」の根拠の1つは、インフルエンザ抗体保有状況調査にある。国立感染症研究所(以下、感染研)が取りまとめているもので、2016年は12月2日に第1報が公表された。

 抗体保有状況調査とは、健常者を対象に、その年のインフルエンザワクチン株に選定されたウイルスに対する抗体をどの程度持っているかを調べるもの。ワクチン株は流行の可能性が高いという前提で選ばれているわけだから、このウイルス株に対する抗体を多く持っている人はインフルエンザにかかりにくい。逆に言えば、抗体保有率が低ければ、感染リスクは高まる。

 発表されたインフルエンザ抗体保有状況調査の結果(第1報)を見ると、今シーズンはA型のH3N2(香港型)あるいはB型の流行が予想される。この2種類のウイルスにおいて、抗体保有率が「低い」年齢層が目立つからだ。

 ここでいう抗体保有率は、感染リスクを50%に抑える目安と考えられる「HI抗体価が40倍以上」の人の割合を示している。感染研はこれまで、抗体保有率60%以上を「高い」、40%以上60%未満を「比較的高い」、25%以上40%未満を「中程度」、10%以上25%未満を「比較的低い」、5%以上10%未満を「低い」、5%未満を「極めて低い」という表現で、感染リスクを抑える目安を示していた。

 この基準を当てはめた場合、今シーズンは表1のような結果となった。表を横に見ていくと、つまり年齢層に着目すると、高齢者と低年齢で「低い」傾向が強いことが分かる。高齢者では、70歳以上は、B型(山形系統)とB型(ビクトリア系統)がともに「極めて低い」であり要注意だろう。65~69歳はB型(ビクトリア系統)が「極めて低い」、B型(山形系統)が「比較的低い」だ。また60~64歳はB型(ビクトリア系統)が「低い」、B型(山形系統)が「比較的低い」だった。これらの年齢層では、B型の「ダブル感染」の危険性もあるということになる。

表1 インフルエンザ抗体保有状況調査の結果(国立感染症研究所の第1報を基に作成)
※AH1pdm09:A型のH1N1、AH3:A型のH3N2(香港型)
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 最も注視すべきは0~4歳。この年齢では、A型のH3N2(香港型)とB型(山形系統)がともに「比較的低い」であり、さらにB型(ビクトリア系統)は「低い」だった(表1)。つまり0~4歳では、3種類のウイルスに感染するリスクが高い。これがトリプル感染懸念の根拠となる。1人が3回インフルエンザに罹患すると、患者数の増加要因になり、また重症化例の多発リスクも押し上げる。

 これまでも日本小児感染症学会などでは、1シーズンに複数回、インフルエンザに罹患した症例が報告されている。例えば、兄弟が同時にインフルエンザに感染。回復した後にまた、2人とも感染してしまった事例があった。1回目に罹患したウイルスが兄弟間で異なっており、2回目の感染では兄が弟から、弟は兄から、それぞれ別のタイプのウイルスをもらっていた。幸いこの兄弟は2回の罹患で済んだが、今シーズンは特に0~4歳児の場合、3回目の感染があるかもしれない。

 0~4歳あるいは高齢者ら抗体保有率の低い年齢層に該当する人は、インフルエンザのワクチン接種はもとより、手洗いやうがいなど日ごろから感染予防に努めるべきだろう。

この記事は、日経メディカルに掲載された記事を一部再編集したものです。