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インフルエンザ総特集

インフルエンザ療養中の転落死に注意、厚労省「玄関や窓の施錠を」

小児・未成年者に多い異常行動、1人にせず飛び降りや飛び出しに対策を

 三和 護=日経メディカル

2017年~2018年シーズンのインフルエンザ流行速報から、知っているようで知らないインフルエンザの基礎知識まで、この特集で一挙解決! インフルエンザ流行マップはこちら毎日更新中です。

 厚生労働省は11月27日、インフルエンザ罹患時の異常行動に関連する転落死などのリスクを低減するための追加策を例示し、各都道府県に対して医療機関への注意喚起の徹底を依頼しました。抗インフルエンザ薬の種類や服用の有無にかかわらず、急に走り出す、部屋から飛び出そうとする、徘徊するなどの異常行動が報告されている一方、因果関係は不明ですが、抗インフルエンザ薬の服用後に異常行動と関連するとみられる転落死などが引き続き報告されていることを受けた対応です。

 医療機関への注意喚起では、「小児・未成年者がインフルエンザにかかった時は、抗インフルエンザ薬の種類や服用の有無によらず、少なくとも治療開始後2日間は小児・未成年者を1人にしない」という原則を患者・保護者に説明することに加えて、新たに小児・未成年者が住居外に飛び出さないための追加策を例示し患者・保護者に説明することを求めました(表1)。

 例えば高層階の住居では、(1)玄関や全ての部屋の窓の施錠を確実に行う、(2)ベランダに面していない部屋で寝かせる、(3)窓に格子のある部屋で寝かせる、を例示しています。また、一戸建ての場合は、こうした対策のほか、できる限り1階で療養を寝かせることを例示しました。

表1 具体的な注意喚起の例(厚生労働省。薬生安発 1127第8号、2017年11月27日)

具体的な対策

原則 (これまでにも注意喚起を行っている内容)

小児・未成年者がインフルエンザにかかった時は、抗インフルエンザウイルス薬の種類や服用の有無によらず、少なくとも治療開始後2日間は小児・未成年者を1人にしない

追加策 小児・未成年者が住居外に飛び出ないための追加の対策(新たに示した対策例)

(1)高層階の住居の場合

  • 玄関や全ての部屋の窓の施錠を確実に行う(内鍵、補助錠がある場合はその活用を含む)
  • ベランダに面していない部屋で寝かせる
  • 窓に格子のある部屋で寝かせる(窓に格子がある部屋がある場合)

(2)一戸建ての場合

  • (1)に加え、できる限り1階で寝かせる

インフルエンザ罹患時の危険な異常行動、昨シーズンは53例

 インフルエンザにかかった未成年者が起こす異常行動は、これまでにどのくらいの件数が報告されているのでしょうか。「インフルエンザ罹患に伴う異常行動研究」(代表:川崎市健康安全研究所所長の岡部信彦氏)の2016/2017シーズン報告(2017年3月31日までのデータ取りまとめ)によると、昨シーズン(2016/2017シーズン)は、飛び降り、急に走り出すなど「制止しなければ生命に影響が及ぶ可能性のある重度の異常行動」は、53例が報告されています(図1)。

図1 重度の異常行動の報告数の推移(発熱から異常行動発現までの日数が把握されているデータに基づく)
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 患者背景を見ると、平均年齢は10.2歳で、最頻値は13歳でした。男性が81%と多かったのが特徴の1つです。発熱から異常行動発現までの日数は、「発熱後1日以内」が34.6%、「2日目」が48.1%、「3日目」が17.3%でした。2日目までで80%以上となっています。

 服用した薬の組み合わせを調べたところ、「イナビルのみ」「イナビル+アセトアミノフェン」がそれぞれ9例(17%)と多く、「リレンザ+アセトアミノフェン」と「いずれかが不明」がそれぞれ7件(13%)でした(図2)。「全て服用なし」も3件(6%)報告されているのも注目点です(*1)。

*1 抗インフルエンザ薬には、吸入薬のイナビル(一般名ラニナミビル)、リレンザ(一般名ザナミビル)、カプセルまたはドライシロップのタミフル(一般名オセルタミビル)の3種類の経口薬のほか、点滴静注薬のラピアクタ(一般名ペラミビル)がある。アセトアミノフェンは解熱鎮痛薬や総合感冒薬に含まれる成分。
図2 服用した薬の組み合わせ別に見た異常行動の報告数
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 また、製薬企業からの報告をまとめた「抗インフルエンザウイルス薬服用時の異常行動」(2009年6月の報告書取りまとめ以降)によりますと、2009/2010シーズン以降、2016/2017シーズンまでに異常行動は全体で404件報告されています。このうち死亡例は、タミフル服用者で3例、リレンザ服用者で3例、イナビル服用者で2例の合計8例でした。なお、厚労省によると、抗インフルエンザ薬と異常行動の因果関係は不明とされています(関連記事「インフルエンザの異常行動は抗ウイルス薬と関係があるの?」)。

この記事は、日経メディカルに掲載された記事を一部再編集したものです。