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インフルエンザ総特集

この冬のインフルエンザワクチン、A香港型には効果が低い可能性も

専門家を悩ませる「鶏卵馴化」とは? ワクチン不足だけでない新たな懸念

 三和 護=日経メディカル

昨シーズンもH3N2型はワクチンへの反応性が低かった

 通常、インフルエンザのワクチンを接種すると、ワクチンに含まれるウイルスの「抗原」に、体の免疫機能が反応して「抗体」が作られます。この抗体が、次に同じようなウイルスが入ってきたときに、そのウイルスの抗原と結合して増殖をブロックし、予防効果を発揮するのです。このような、抗体に結合する抗原の性質を「抗原性」と呼びます。

 ところが、鶏卵を使ったワクチンでは、増殖の過程でウイルスが環境に適応しようとして、抗原性が変化(抗原変異)することがあります。この現象は「鶏卵馴化(じゅんか)または「卵馴化」と呼ばれ、世界的に問題になっています。増殖過程で抗原性が変化してしまうと、でき上がったワクチンを打っても、実際に流行したウイルスに対応した抗体ができにくくなり、予防効果が著しく落ちてしまいます

 実は昨シーズン(2016/2017年シーズン)のワクチンも、A/H3N2では鶏卵馴化による抗原性の変化が起こり、流行ウイルスと抗原性が乖離するという傾向が認められました。流行したウイルスを調べてみたところ、9割以上において、ワクチンに対する反応性が低下していたのです(図1)。他の3種類のウイルスでは、ワクチンへの反応性は良好でした。

図1 2016/2017年シーズンのA/H3N2流行ウイルスとワクチンの抗原性の違い
鶏卵から分離したワクチン製造ウイルスを動物(フェレット)に感染させて作った血清を使って、ワクチン製造ウイルスと流行したウイルスの抗原性を比較したところ、9割超の流行ウイルスで抗原性が大きく異なっていることが分かった。もともとのワクチン用ウイルス(鶏卵から分離したウイルス)と血清の反応を1(ホモ中和価)とした場合、抗原性の違いが8倍だったのが11%、16倍以上だったのは83%と高率だった(倍数が小さいほど抗原性が類似していることを示す)。抗原性が類似していると判断される4倍以下は7%と少なかった(出典:国立感染症研究所「インフルエンザウイルス流行株抗原性解析と遺伝子系統樹、2017年11月7日」)
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思わぬアクシデントで生産量確保を優先、予防効果には懸念が…

 今シーズンのワクチンに使われた4種類のウイルスを見てみましょう。2017年は、以下のウイルスがワクチン製造用に選ばれました。

2017/2018年シーズンのワクチン製造に採用されたウイルス
  • A/H1N1pdm2009:A/シンガポール/GP1908/2015(IVR-180)
  • A/H3N2:A/香港/4801/2014(X-263)
  • B型(山形系統):B/プーケット/3073/2013
  • B型(ビクトリア系統):B/テキサス/2/2013

 ワクチン用のA/H3N2ウイルスは当初、馴化の影響を受けにくい別の系統のウイルスが選ばれていました。厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会によると、当初選ばれていたウイルスは「鶏卵馴化による抗原変異の影響が小さく、約60%の流行ウイルスと抗原性が類似していた」とされます(*2)。

 ところが実際にこのウイルスを用いてワクチンの製造を開始したところ、増殖効率が想定より著しく悪いことが判明しました。6月の時点で、このまま製造を進めると、ワクチンの総生産量が低下し、昨年度比で約71%程度にとどまることが予測されたのです(*3)。

*2 2017年8月25日 第16回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会  配布資料2「2016/17シーズンの国内外のインフルエンザ流行株(総まとめ)および次シーズンのワクチン株について」
*3 同上  配布資料1「2017/18シーズンにおけるインフルエンザワクチンについて」

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