妻から夫へのインフルエンザ感染が少ないのはなぜ?
今さら聞けないインフルエンザの話〔その3〕
三和護=日経メディカル
2015年~2016年シーズンのインフルエンザ流行速報から、知っているようで知らないインフルエンザの基礎知識まで、この特集で一挙解決! インフルエンザ流行マップはこちらで毎日更新中です。
Q 家族の中で最初にインフルエンザに感染するのは、多くの場合、子どもたちです。一人がかかると兄弟姉妹に広がり、看病に当たる機会の多い母親にうつるというパターンが多いようです。では、母親が最初にかかった場合、家族の中で一番感染する割合が低いのは誰なのでしょうか?(30代女性)
A あるデータによると、父親です。これには様々な解釈が成り立ちますが、母親の看病をする父親が少ないということなのかもしれません。

インフルエンザの家庭内感染や学校内感染について詳しい廣津医院(神奈川県川崎市)院長の廣津伸夫先生によると、家庭内でインフルエンザに感染する率は、地域で感染する率(市中感染)の2~3倍高いそうです。
また、家族の中で最初にインフルエンザにかかった患者を調べたところ、6歳未満の子どもが最も多く、次いで7~12歳、母親、13歳以上の子ども、そして父親という順番でした。2番目にかかった患者は、母親が最も多く、6歳未満の子どもがそれに続きました。
さらに細かく感染経路を見たところ、例えば最初にインフルエンザにかかった患者が6歳未満だった場合、2番目以降の感染者は6歳未満の子どもが最も多く、25.0%でした。次に高いのは母親で16.0%でした。
廣津先生は、子どもから子どもへの感染率が高いのは、兄弟姉妹で触れ合う機会が多いだけでなく、同じ部屋で寝起きするなど、互いの距離が近いことも関係しているとみています。母親の感染率が高いのは、子どもの看病に当たる機会が多いからという見方でした。子どもがインフルエンザにかかったら、兄弟姉妹はなるべく近づけず、また、母親に限らず看病に当たる人はマスクを付けるなどの対応が必要と指摘しています。
インフルエンザは患者のしぶきを浴びて感染するケースが多い
インフルエンザの感染リスクは、2メートル以内だと高くなるといわれています。インフルエンザの感染の多くが飛沫感染で起こるためです。
患者がくしゃみや咳などをすると、しぶき(飛沫)が飛びます。その飛沫の中には、多くのインフルエンザウイルスが含まれているのです。しぶきを直接吸い込んだり、顔や手についたものが鼻や口に運ばれることで、インフルエンザウイルスが感染していきます。空気中に浮遊したウイルスを吸い込んでというよりは、しぶきを浴びて「瞬時に感染してしまう」というイメージです。
廣津先生の研究で、少し気になるデータがあります。それは、最初にかかった患者が母親だったときです。