米国のIT起業家が大枚はたいてたどりついた究極の食事術とは?
デイヴ・アスプリー著『シリコンバレー式自分を変える最強の食事』
福光 恵=ライター
出世レースから脱落したことをきっかけに、ダイエットに打ち込むようになった、とある大企業の管理職氏を取材したときのこと。その理由を、氏はこんなふうに説明した。
「会社は裏切るけど、ダイエットは裏切らないからね」
10代から数々のメソッドを試し、ダイエットがライフワークになりつつある自分も、これには大きくうなずいた。そうそう、ダイエットは一種の自己実現。しかも、成果は容赦なく目に見える。どんなダイエットメソッドでもストイックに取り組めば、必ずシェープアップというご褒美が出るし、ちょっとでも怠ければ、体重増という罰が下される。
「シリコンバレー式 自分を変える最強の食事」の作者、デイヴ・アスプリー氏も、そんなダイエットという自己実現に魅せられた一人だと思う。
1970年生まれ。本業は、シリコンバレーでは知られた大金持ちのIT起業家、投資家。15年間にわたって30万ドルもの資金を投じてダイエットを研究し、たどりついた「完全無欠ダイエット」をまとめたのがこの本だ。

それも自分の「ローカーボ(低炭水化物)からココアダイエットに浮気」みたいなダイエット研究とはワケが違う。持ち前の探究心とハック精神で、脳施設からチベットの僧院までを探索するかたわら、世界の有数な医学博士、化学者、栄養士などの研究を収集。星の数ほどあるダイエットメソッドを検証しながら真実を模索し、140キロあった体重を毎日500gずつ減らすことに成功している。おまけにIQが20もアップするというご褒美付きだ。
その食事法は、食材の選び方から、食べるタイミング、調理法、調味料の選び方、使い方まで、具体的なレシピとともに、うるさいほど詳細に紹介。低炭水化物ダイエットを体内のカビ毒という観点で論じたり、大豆製品を否定するなど、独自の新説も数多く紹介されているものの、科学的裏付けやフィールドワークによるバックアップで、トンデモ色はあまりない。つまり、読者を納得づくでやる気にさせる良ダイエット書だと思う。
紹介されるメニューが細かすぎて、MCTオイルなど、簡単に入手できないマニアックな食材がたびたび出てくるのはちょっと難点だが、自己実現の山は、高ければ高いほど登りがいがある。ずぼら派ダイエッターの自分は、読んだだけで挫折したが、将来本気を出すときにまた、開いてみたいと思う。
ライター