日経グッデイ

冬の肩凝り完全撃退!

「筋膜マッサージ」でやっかいな“現代型肩こり”解消

しつこい肩こりは、つかんで回して「はがす」が正解!

 二村高史=フリーライター

本格的な冬が近づき、朝晩はぐっと冷え込むようになってきた。これからの季節は、肩の凝りや痛みが出やすい時期。今や肩こりに悩む人は2400万人にも上る(厚生労働省調べ)とされ、もはや「国民病」とも呼べる身近な不調の1つ。しかし、現代生活における肩こりは、「ひと昔前の凝り方とは明らかに違ってきた」と、専門家たちは指摘する。本格的な「肩こりシーズン」に向けて、しつこい肩こりを驚くほど簡単に解消できるメソッドをはじめ、徹底的に撃退するためのノウハウをご紹介していこう。

昔ながらの「揉む」方法では肩こりは治りにくい

 ひどくなると、頭痛や吐き気なども引き起こす肩こり。つらい肩こりを少しでも和らげようと、マッサージやカイロプラクティックなどのお世話になっている人は多いだろう。

これから気温が下がる時期は、知る人ぞ知る本格的な「肩こりシーズン」でもある。

 ところが、そうした施術を受けて一時的に肩こりが緩和しても、その効果はなかなか長続きしないもの。すぐに元に戻ってしまうどころか、場合によっては、いわゆる「もみ返し」などによって、それまでよりも状態が悪くなってしまうことさえある。

 「便利で近代的な生活の中で生じた肩こりは、かつてとは違い、昔ながらの強く揉むといった施術が効かなくなっている。その大きな理由は、現代の肩こりが肩や首の周りにある小さな筋肉をはじめとして、特に『筋膜』などにダメージが蓄積しているからだと考えています」

 こう指摘するのは、I.P.F.研究所主宰の磯﨑文雄さんだ。昔と今とでは、肩こりの質が違う…。これは、一体どういうことなのだろうか。

パソコン、スマホを酷使する生活が“現代型肩こり”を生む

 磯﨑さんによれば、昔の肩こりは仕事に伴う大がかりな手作業、いわば肉体労働的に大きな筋肉を使ったことで起きていた。対して、現代の場合は、パソコンやスマートフォンなどの操作を伴う、小さな筋肉を酷使し続けることに原因があるという。

 デスクワークが中心で同じ姿勢を長時間続け、背中を丸めたまま緊張した状態を体に与え続ける。たしかに電話1本かけるにしても、腕を伸ばしてボタンを指で押していた固定電話を使うより、小さなスマホの画面を指先だけで操作する回数の方が今では多くなっているに違いない。こうした細かく小さな動きの集積が、肩の深部にある筋肉を凝らす“現代型肩こり”を生んでいたのだ。

 「ほんの10年、20年前までは、肩の表層にある大きな筋肉群を強くほぐすことで凝りは解消できた。ところが深層部にある小さい筋肉群に凝りができると、昔ながらの施術ではそこまで刺激が届かず、慢性的なしつこい凝りが続いていしまうのです」(磯﨑さん)

 実際に、凝りや痛みを感じる肩周りを指先で強く押してみると、その深部にゴリゴリとした固い塊に当たることがある。これこそが凝りや痛みを発しているわけだが、ちょっとやそっとのマッサージではほぐれにくく、対処療法で解消したとしても、再び同じところに塊ができることも多い。

凝りの元凶は筋肉の動きを鈍らせる「筋膜」との癒着

 こうした現代型肩こりを解消するためのキーワードが、「筋膜」にあると磯﨑さんは言う。

 筋膜とは、筋肉を覆っている薄い膜のこと。凝りやすい首や肩の部分には、大小様々な筋肉が重なりあっていて、その一つ一つが筋膜で覆われ、何層にもなっている(右下図参照)。スライスした生ハムと生ハムの間に薄いビニールを挟んで何層にも重ねた「ミルフィーユ」のような状態をイメージするといいだろう。生ハムが筋肉で、ビニールが筋膜にあたる。

筋肉と筋膜は何層にも重なっているが、互いに癒着した状態になると凝りが起こる。この状態のままマッサージを施しても、凝りを取る効果が上げられない(上図)。皮膚から凝った部分やその周りを指先で押してマッサージを施す。すると、押さえたところが支点となって癒着がとれはじめ、筋肉と筋膜が個別に動かせるようになる(下図)。
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 「正常な体であれば、筋肉と筋膜は互いにスライドして自由に動くことができる。ところが、同じ姿勢や細かい作業を長時間続けたり、繰り返したりすることで、筋膜が筋肉に癒着してしまうのです。さらに筋膜同士で癒着していることもある。すると、筋肉がうまく動かせなくなってくる。こうして周囲にある血管の弾力性が落ち(動きが鈍り)、血流が滞ると、そこに発痛物質を含む老廃物が蓄積していく。これが筋肉の深部に起こることで、凝りをどんどんしつこくする悪循環を生むのです」(磯﨑さん)

 このように、我々が抱えている現代型肩こりは、今のライフスタイルからも分かるように、とても避けられそうにない厄介な不調にもなっているのだ。

 そこで、筋膜と筋肉の癒着を効果的に取り除き、深層の凝りを取る磯﨑さん独自のメソッド「筋膜マッサージ」を紹介しよう。まずは、体の背部をほぐす3つのメソッドから。いずれも凝った部分とその周囲を指で押さえたまま、腕を大きく回すのがポイント。指で押さえたところが支点となり、腕の動きによって癒着した筋膜が筋肉から剥がれていく仕組みだ。オフィスで仕事をしている間でも、わずか1分あればできる簡単なものもある。「指で支点を作って筋肉を動かすだけで、癒着した筋肉と筋膜が簡単に剥がれることがわかっています。痛気持ちいいぐらいの強さを感じる程度で繰り返してください」(磯﨑さん)。

基本のマッサージで深部の凝りにアプローチ

1.肩甲骨押さえ回しマッサージ

指先で押さえるココ!
肩甲骨の内側を中心に、凝ったところの周辺を指先で抑える。肩のラインに沿ってマッサージの範囲を広げてもいい。
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 まずは、基本のマッサージ。凝っている部分をギュッと指先で強く押しながら、腕を回す。やや痛いと感じるくらいに強く押さえるのがコツ。

 「肩の凝りを腕だけ回して解消する人は多いですが、それでは癒着した筋膜と筋肉が固まったまま動くだけ。そこで、凝った部分とその周辺を含めたエリアを指先で押さえ、腕を大きく回すのがポイント」(磯﨑さん)。癒着した部分が少しずつはがれてくると、腕も大きく回るようになり、肩の周りがポカポカしながら凝りが解消していくのがわかるはず。

写真左から、肩甲骨の内側に沿って、凝っている所を、人差し指から小指までの4本で強く押さえる。指先でひっかけるようにしっかりと凝ったところをつかむ。次に、つかんだまま、腕を後ろから前に向けて回す。このとき、ひじを曲げて大きく円を描くようにして、「後ろ回し」「前回し」の順に各10回ずつ。指の位置を少しずつに上や下にずらしながら、腕回しを繰り返すとさらに効果がアップする。
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 凝りがひどいと、最初のうちは腕がスムーズに回せないかもしれない。そのときは、腕を前後に振ることからはじめるといい。徐々に動きがスムーズになっていくはずだ。

頭を前後に倒して首から肩への凝りにアアプローチ

2.うなずき首マッサージ

指先で押さえるココ!
押さえるのは耳の裏から首の前部にかけてのエリア。胸鎖乳突筋に沿って凝った所を中心に、人差し指から薬指までの3本で押さえる。
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 肩の筋肉がほぐれたら、次は首の周りをほぐそう。ここでは首の前側の付け根から耳のうしろにかけて走る胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)という太い筋肉にアプローチ。

 胸鎖乳突筋(右の写真参照)にある凝った所を、人差し指から薬指までの3本で強く押さえる。押さえるのは筋肉の上。特に耳の裏側にある突起した骨(乳様突起・にゅうようとっき)の下のくぼんだ場所を重点的にほぐそう。

 「胸鎖乳突筋をほぐすと、肩や首の凝りはもとより、頸動脈にかかる圧も和らげるために脳への血流を上げます。これが同時に緊張状態を続ける自律神経にも働きかける。首の緊張や凝りが取れることでリラックス効果も高められます」(磯﨑さん)。

指先で首の沿って伸びる筋肉を抑えたまま、ゆっくり顔を下に向ける。背すじは伸ばしたまま、背中を丸めないように行うこと。次に、ゆっくり顔を上に向ける。今度は、背すじを伸ばしたまま、胸を反らさないように行う。一連の動きを2~4回繰り返す。指で押さえる部分を、首すじに沿って少しずつ上や下にずらして行うと、さらに凝りほぐしの効果がアップする。特に耳の裏にある乳様突起の下にあるくぼみを重点的にほぐすといい。
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ボールを支点にして深部をほぐす

3.肩甲骨ボールマッサージ

 さらに、肩甲骨と背骨との間にある筋肉を深く強く刺激したいという人に向けて、テニスボールなどを使ってほぐすマッサージを紹介しよう。「ボールに体の重みがかかることで、指先だけでは届きにくいより深層分の筋肉まで刺激が届き、筋膜の癒着をとることができる。頑固な肩こりに悩んでいる人に、特にお薦め」と磯﨑さん。バスタオルとテニスボールを1つ用意すればOK。バスタオルの代わりにクッションや枕、ボールは野球の軟球で代用してもいい。

床の上であお向けになり、腰と床の隙間にバスタオルを巻いて置く。テニスボールを肩甲骨と背骨との間に置き、リラックスして体の重みをボールに預ける。腕で大きな円を描くように、ゆっくり1分間、内側と外側に回す。ボールの位置を内側や外側、上や下にずらして、腕を回し続ける。体の左半分をほぐしたら、右半分も同様に行う。
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これも試そう!~ブリッジマッサージ

 肩にテニスボールを当てたまま、両足でブリッジの態勢を作る。凝った部位にダイレクトに力が加わり、より深層にアプローチできる。余力があれば、この態勢のまま、前ページで紹介した腕を回す動きを加えてみよう。

体の重みがダイレクトに肩の深部まで入る。このポーズを維持するだけでも、肩の深部にできた塊に対して「指圧マッサージ」のような効果が得られる。

 いかがだろうか。少しやっただけでも凝りがスッキリ取れ、体が汗ばんだり、肩の周りがポカポカしてきたりした人も多いはずだ。まずはここで紹介したマッサージを1週間続けてみてほしい。今回は、体の裏側を刺激するマッサージを紹介した。次回は、体の表側から凝りを撃退する磯﨑式マッサージの第2弾をご紹介しよう。

(写真:村田わかな/イラスト:三弓素青/モデル:増田雄一=HEADS)

磯﨑文雄さん
I.P.F.研究所主宰
磯﨑文雄さん 1951年、神奈川県生まれ。筋膜研究家。I.P.F.研究所(磯﨑健康研究所)主宰、ainamana(アイナマナ)代表。筋膜マッサージ・ビューティー筋膜マッサージ、磯﨑式健康体操創始者。ヨーガ研究・指導家。日本手技療法学会会員、全日本鍼灸マッサージ師会会員。著者に「筋膜マッサージでつらい腰痛が消えた!」(青春出版社) 、『咀嚼筋(そしゃくきん)マッサージ』(実業之日本社)など。