日経グッデイ

カラダにいい!がカラダを壊す

劇的な即効性をうたう健康食事法は絶対「体に悪い」

第4回 コロコロ変わる「カラダにいい食事」とどう付き合うか

 亀田圭一=コンディショニングトレーナー、BODY TIPS代表

次から次へと出てくる栄養学

 「カラダづくりは栄養が6割、運動が4割」

 これは、私がトレーナーとして、アスリートを相手に仕事をしていた時代から、一般の方々のカラダづくりに携わる現在まで、変わらずに言い続けてきたことです。

 カラダは日々食べたものを材料としてできています。また、何を食べるかは、人間の生命活動を左右するホルモンの分泌にも大きく関係しているとされています。そう考えると、6割どころではないかもしれません。それほど、日々の食事が重要であることは、私のこれまでの経験からも実感していることです。

「食事がカラダづくりに大きく関係していることは、どなたも感じていることでしょう。食べ過ぎないで適度な量を心掛けること、何かに偏ることなくバランスよく食べること、不規則な時間の食事を控えること、それだけでカラダは整います」(亀田)。(©George Tsartsianidis -123rf)

 ところが、どのような食事がいいのかを示すはずの栄養学は、よくいえば日進月歩、悪くいえば、これほどコロコロ変わるものはありません。

 書店に平積みになっている健康本は、気を引くタイトルで読者を誘惑します。ネットを覗いて調べ物をすれば、興味をそそる話題が山のように並び、読み漁るうちに自分の行動に統一性がなくなってくるという人もたくさんいるのではないでしょうか? あるいは、何かひとつの情報がインプットされると、誰かが洗脳した訳でもないのにその呪縛から逃れられなくなってしまいます。

 「〇〇を食べてはいけない!」

 「◇◇を食べると病気になる!」

 そんなネガティブな訴求の仕方は人の目を引くのか、この手のものが増えているようにも思います。

 食事がカラダづくりに大きく関係していることは、どなたも感じていることでしょうから、いきおいこうした情報には敏感になりやすくなります。

 世の中にあふれる栄養学や食事法に対して、自分で判断して、自分に合うものを合う形で取り入れるならばいいのですが、なかなかそうはいきません。「○○をまったく食べてはいけない」「△△を食べていれば大丈夫」といった極端な食事法は、これまでにない目新しいものだと映るためか、残念ながらこうした情報に踊らされがちな人が少なくありません。

 ところが、そうした極端な食事法は、2年、3年もすればほとんどが忘れられてしまいます。今流行っているものも、5年もすれば「あのブームはいったいなんだったのか」と思うようになることでしょう。

効果を感じないのに続けるのは時間の無駄

 では、自分が選んだ栄養学に対して、それが効果があるのかないのか、何を基準に判断したらよいのでしょうか?

 その答えはシンプルです。自分に何らかの変化や効果を感じられるかどうかです。これは、栄養に限らず、運動や施術でも同様です。効果を感じなければ続けている意味がありません。

 ところが、実際には「先生に言われたからこのトレーニングを続けている」「情報誌やネットに書いてあったからやっている」という人がいかに多いことか。効果を感じないのに続けているのは、時間のムダ以外の何者でもありません。

 たとえば、厚生労働省が定めた目安に、どの栄養素を1日に何グラムとるべきという基準が示されていますが、ではそれをとったことでカラダにいいと実感している人が、どれだけいるのでしょうか。

 栄養学的に一日の摂取カロリーの目安などが提示され、糖質・脂質・タンパク質の量がこのくらいと細かに示されます。もっと専門的に言えば、ビタミン・ミネラルなど素人にはとても覚え切れない、栄養素の摂取量の上限値まで示されてしまうこともあります。果たして動物は、そんな事細かな数値を知って自らを管理しなければならない不自由な生き物なのでしょうか?

2週間で10kg痩せたら体に悪いに決まってる

 効果があるかどうかは大切なことです。ただし、効果がすぐに目に見えればいいとは限りません。ダイエット目的の極端な食事法は例外です。極端な食事がカラダによくないことは、少し考えればわかるはずなのですが、とくに女性がダイエットをしようとすると、その基本が忘れられがちです。

 ダイエットなどがカラダづくりの目的になってくると、またややこしいことになってきます。夜の10時から深夜2時の間に食べると太る、ごはん、麺類などの糖質は徹底的に排除すべきなど、世の中にはたくさんの情報が溢れています。

「私たち日本人は、劇的に効果があって、即効性のあるものを求める傾向があるようです。しかし、たとえ運動と食事を組み合わせたとしても、2週間で10キロもやせたとしたら、それは間違いなくカラダに悪いことだと考えるべきなのです」(亀田)

 いつの世もダイエットの主役は女性なのですが、彼女たちの中にはメチャクチャなことを平気で繰り返している人が後を絶ちません。その結果、痩せないどころではなく、体調不良に陥っている人がかなり多くなっています。当の本人たちはその原因がメチャクチャなダイエットにあるということに気がついていないから困ってしまいます。食べるために生きる動物である人間は、食べないという選択肢は死を意味するということを今一度考える必要があります。

 私たち日本人は、劇的に効果があって、即効性のあるものを求める傾向があるようです。「2週間でやせる」といったキャッチフレーズにも弱いのです。しかし、たとえ運動と食事を組み合わせたとしても、2週間で10キロもやせたとしたら、それは間違いなくカラダに悪いことだと考えるべきなのです。

自分の食事法が合っているかどうかは「快便」で判定

 繰り返しになりますが、世の中に溢れる情報のすべてが真実とは限りません。先日も目にしたニュースの中に、コレステロールの摂り過ぎは健康に害を及ぼさないというものがありました。糖尿病や動脈硬化の敵であるこのコレステロール、恐らくほとんどの人が悪者扱いしているのではないでしょうか? しかし、日本動脈硬化学会の発表によれば、コレステロール値の高い食品を摂取しても、体内でのコレステロール合成量を減らして調整するしくみが人間のカラダにはあるということがわかったらしく、このニュースになったようです。

 まさしく医科学、栄養学は日進月歩であるというよい例です。卵は食べ過ぎるといけないらしい! と言っていた人の顔が目に浮かび、密かにニヤッと笑ってしまったのは、私だけではないかもしれません。

 食事においてもっとも大切なことは、量・バランス・タイミングだと、ずっといっしょに働いてきたシンクロナイズドスイミング日本代表チーム管理栄養士の花谷遊雲子さんがいつも言っていました。食べ過ぎないで適度な量を心掛けること、何かに偏ることなくバランスよく食べること、不規則な時間の食事を控えること、それだけでカラダは整います。

 この連載で、私は筋肉のバランス、心のバランスの大切さを述べてきました。そして、食事についても、やはり大切なのはバランスです。そして、それをセルフチェックするポイントは、日々「快便であるかどうか」です。もちろん、快便であるということは、腸が健康であるという1つのバロメーターになるのです。

 腸の大切さは、生物の進化からも理解できます。生物の進化を考えるとき、まず最初に現れた器官が消化器系です。きわめて原始的な生物は、ものを体内に取り入れて、不必要なものを排出するという行動だけで成り立っています。

 進化するにしたがって、呼吸器系や循環器系ができて、脳に代表される神経系ができあがるのはずっとあとの話です。

 最近では、腸の大切さが認識されるようになり、腸は「第二の脳」とまで言われるようになりました。しかし、こうした進化の歴史まで考えれば、「第一の脳」と呼んでも差し支えないような気がするのです。

 そう考えれば、生きるための基本は胃や腸を中心とする消化器系であり、それを大切にした生活を送る必要があると理解できるでしょう。

(まとめ:二村高史=フリーライター)

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 毎日のように登場しては、消え去って去っていく「体にいい」とされる情報。なかには一大ブームを巻き起こす“偏った健康法”も少なくありません。果たして、いま大ブームのランニングは、体にとって本当にいいことなのか? 筋肉を鍛える目的、食事をコントロールして体調や体重を管理しようとする理由は…。「カラダいいらしい」と誤解しながら、体を壊してしまう危ない人たちに向けて、気鋭のコンディショニングトレーナーが、数々の気づきを提唱します。

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亀田圭一さん
コンディショニングトレーナー、BODY TIPS代表
亀田圭一さん 青山学院大学卒。 航空会社勤務などを経て、一転トレーナーを目指し鍼灸師免許を取得。鍼灸学校に学びつつ、母校の青山学院大学トレーニングセンターにてトレーナー研修を積み重ね、プロのトレーナーとして活動する。 2010年7月、東京都渋谷区にBODY TIPSを設立。NSCA認定パーソナルトレーナー(NSCA-CPT)、はり師、きゅう師、あん摩・マッサージ・指圧師、さとう式リンパケア・インストラクターほか、コンディショニングに関する国家資格、認定資格を多数保有。