朝のランニングが1日を台無しにする?
第1回 「カラダにいい」のカラダってなんですか?
亀田圭一=コンディショニングトレーナー、BODY TIPS代表
なぜ健康本には極端なことが書かれているのか
私が『カラダにいい!がカラダを壊す』(日本経済新聞出版社)を書くきっかけとなったのは、これまで話題やブームになった多くの健康本に対して、大きな不満があったからです。少し挑発的に聞こえるかもしれませんが、世の中に溢れている健康本には、「まがいもの」がじつに多いと個人的には感じています。
具体的に言うと、偏った知識を基にして、一方向なものの見方で書かれている健康本のことです。ですから、ある食べ物がカラダにいいという本もあれば、その逆にカラダに悪いという本も登場するわけです。

なかでも少し厄介だと感じている健康本の1つが、医師の書いた一部の書籍です。一般読者の中には「カラダにことに詳しい医師が書いたのだから間違いないのだろう」と、そこに書かれていることを鵜のみにすることが多いかと思われます。しかし、そこに落とし穴があるのです。
たくさんの健康本が発売される中では、人の関心や興味を引かなくてはなりませんから、平凡な内容だと意味がありません。そこで、人の不安を煽ったり、効果を水増しできたりするような謳い文句が必要になる。「○○をすると早死にする」「××を食べれば病気にならない」といった類いの極端な内容になりやすいわけです。
ところが、それを真に受けた読者たちが、「△△は体にいいらしい!」とブログやSNSを通じて拡散をはじめる。だんだん話題になってくると、一部のメディアも追随をはじめる。こうして、なかには“危ない健康情報”が世の中に氾濫していくわけです。
でも、ちょっとそこで考えてほしいのです。そもそも、「カラダにいい」とは、どういうことなのでしょうか。
人並み以上の努力や苦労をする必要は全くない
これを食べればカラダにいいらしい…と、何か特定のものばかり食べている人にその理由を尋ねると、「これがカラダにいいって聞いたから…」と、答えます。
そこで私が、改めて尋ねます。「カラダにいい、のカラダって何ですか?」
今までこの質問に答えてくださった人は一人もいません。とりわけ食に関してはこのフレーズのオンパレードです。そんな曖昧な理由で、多くの人は行動しています。
「食」だけではなく、運動に関しても同様の傾向があります。ジムに行けば、「カラダにいい」とばかりに、次から次へと出ては消えていく目新しいプログラムに飛びつきます。ただ、流行に敏感な人ほど長続きしないのが常。そもそも運動がカラダにいいと頭から信じている人に、そのときの体の状態に応じて何がいいことで、どれが悪いことなのかを筋道立てて順序よくお話ししていくのが、私の日々の活動でもあります。
誤解を招く前に先にお伝えしておくと、すべての運動が悪いと言うつもりはありません。
ただ、カラダのために偏ったことをする必要は全くないのです。
ましてや、人並み以上の努力や苦労をする必要など全くもってありません。ランニングを例に、説明しましょう。