抗生物質の乱用が招く「耐性菌」の脅威って?
耐性菌は、なぜ怖い?私たちはどうすればいい?
稲垣麻里子=医療ジャーナリスト
世界規模で広がる「耐性菌」の脅威

抗生物質(正確には抗菌薬)は病原菌を死滅させる目的等で使用され、細菌による感染症に劇的な効果をあらわす、医療に欠かせない薬だ。ただ、細菌も生き残りをかけて、この抗生物質に抵抗するべく遺伝子を変化させる等の手段を講ずる。こうしてできた菌を「耐性菌」と呼ぶ。
この耐性菌をめぐる問題、つまり、薬が細菌に効かなくなる「薬剤耐性」の問題が世界規模で急速に広がっている。
イギリスの調査によると、2050年には年間1000万人が耐性菌で命を落とすと推測されている。こうした中、「薬剤耐性」の問題について世界保健機関(WHO)と連携したアジア・太平洋地域の関係閣僚会議が2016年4月に日本で開催されることが決まり、世界的な枠組み作りも始まろうとしている。
耐性菌で命の危険にさられるのは弱者
耐性菌によって命の危険にさらされるのは、主に高齢者や乳幼児など体力のない人だ。抗生物質が多く投与されている重症患者の体内には耐性菌が発生しやすい。重症患者が多く集まる病院で耐性菌が蔓延した場合、患者が院内感染で命を落とすことも少なくなく、ニュースで取り上げられるたびに院内の管理体制が問題視される。
だが、実は一般の人たちも、この耐性菌の蔓延に知らず知らずのうちに加担していることもある。抗生物質の乱用だ。自分には心当たりがないという人も、たとえば次ページで挙げるような経験がないか振り返ってみてほしい。
