1回きりはダメ! がん検診は繰り返し受けることで利益がある
効果的ながん検診の受け方は?
田村 知子=フリーランスエディター
春と秋のどちらかに行われる職場の健康診断は欠かさず受けている人が多いでしょう。では、がん検診は? いまや国民の2人に1人ががんになるといわれています。にもかかわらず、日本のがん検診受診率は、男性においては、胃がん、肺がん、大腸がん検診の受診率は4割程度で、女性においては、乳がん、子宮頸がん検診を含めた5つのがん検診の受診率は3〜4割台と低い状況にあります。日経Goodayでは、がん検診について総ざらいしています。第4回は、効果的にがん検診を受けるポイントについて、国立がん研究センター がん予防・検診研究センターの斎藤博さんに聞きました。
まずは対策型検診で採用されている検診を活用
がん検診の受け方で最もデメリットが少なく、メリットが大きいのは、推奨される有効な検診、すなわち、死亡率を下げると科学的に証明された検診を、決められた年齢と間隔で定期的に受ける方法です。つまり、対策型検診(参照記事:「自治体と人間ドックのがん検診、何がどう違う?」)で採用されている検診方法ということになります。
そこで知っておいてほしいのが、実際にはがんがない場合でも、がんを疑う「偽陽性」と呼ばれるケースが少なからず発生することです。「例えば、乳がん検診の場合、1000人のうち100人程度の人が、乳がんの疑いあり(異常あり)と判定が出ます。しかし、その後の精密検査で実際にがんが見つかるのは、そのうちの2~3人。残りの95人以上は『偽陽性』 ということになります」(斎藤さん)
偽陽性には、様々なデメリットが伴います。実際にがんがなくても精密検査を受けることになり、検査による副作用や偶発症(出血など)が発生するケースも中にはあります。マンモグラフィの場合、X線被ばくによって将来がんになるリスクが、ごくわずかではあるものの高まります。しかし最も頻度が高く、問題とされるのは、検診で「疑いあり(異常あり)」といわれたことで精神的な不安が発生することによる不利益で、うつ状態に陥る人もいます。国際的にはこれが最重要視されています。偽陽性以外にも、過剰診断の問題も発生します(参照記事:自治体がん検診での死亡リスク低下割合は20~80%」)。
検査方法 | 対象者 | |
胃がん検診 | 胃X線検査 | 40歳以上の男女 |
肺がん検診 | 胸部X線検査と喀痰細胞診(一部) | 40歳以上の男女 |
大腸がん検診 | 便潜血反応検査 | 40歳以上の男女 |
乳がん検診 | 視触診とマンモグラフィの併用 | 40歳以上の女性 |
子宮がん検診 | 子宮頸部細胞診 | 20歳以上の女性 |
*2)2016年度から、視触診をせずにマンモグラフィー単体でもよくなる予定。
- 次ページ
- がん検診は単発では効果不十分
BACK NUMBERバックナンバー
RELATED ARTICLES関連する記事
医療・予防カテゴリの記事
-
新型コロナワクチン、現時点での安全性を確認
トピックス
-
「γ-GTP」だけ見ていては見逃される、肝臓の危険なサインとは?
忍び寄る肝臓の危機
-
コロナワクチン基礎の基礎 なぜ効くの? 副反応は大丈夫? トピックス
-
海外赴任で見逃した怖い腎臓病、治療はどうなる? 怖い病気の予兆
-
痛風の発症リスクが77%減少する4つの条件とは? 話題の論文 拾い読み!
-
見逃されがちな「足の動脈硬化」、閉塞性動脈硬化症はなぜ怖い? 名医が解説! 最新治療トレンド
-
「近くばかり見ていると近視になる」は本当か Dr.石岡の「こんなときは眼科へ行こう!」
-
「二重マスク」と「ひも結びマスク」はコロナ感染予防効果を高める トピックス
-
新型コロナウイルス関連記事まとめ トピックス
-
死亡率1位の肺がん、早期発見は胸部レントゲンだけでは不十分? がんの早期発見 素朴な疑問に答える
FEATURES of THEMEテーマ別特集
-
- 変形性膝関節症のつらい痛みを改善する運動とは?
-
年を取ると多くの人が感じる「膝の痛み」。その原因で最もよくあるケースが「変形性膝関節症」だ。膝が痛いと外出がおっくうになり、体を動かす機会が減るため、そのまま何もしないとますます足腰が衰えてしまう。だが実は、変形性膝関節症の痛みをとり、関節の動きを改善するために有効なのが、膝への負担を抑えた「運動」なのだ。ここでは、膝の痛みが起きる仕組みから、改善するための運動のやり方までをまとめよう。
-
- 始めよう筋トレ 最低限やりたいエクササイズと食生活のポイント
-
筋トレはできるだけ若いうちに始めることに大きなメリットがあるといわれる。それはなぜなのか。また、どんな筋肉をどのように鍛えるのが効果的なのか。高齢になってもしっかりした足腰でいるために今のうちから最低限やっておきたい筋肉エクササイズ、食生活の注意点などを知り、今年こそ「筋トレ習慣」を身に付けよう。
-
- 第3波を乗り切るためのコロナ対策
-
新型コロナウイルスの新規感染者が再び急増し、日本は今、流行の第3波を迎えている。今後さらに気温と湿度が下がると、ウイルスの生存により適した条件が整うようになる。これ以上の流行拡大を防ぐためには、1人1人が感染予防策を改めて見直し、感染リスクの高い行動を避けて生活することが不可欠だ。第3波を乗り切るためのコロナ対策を、もう一度まとめた。
スポーツ・エクササイズSPORTS
ダイエット・食生活DIETARY HABITS
からだケアBODY CARE
医療・予防MEDICAL CARE
「日経Goodayマイドクター会員(有料)」に会員登録すると...
- 1オリジナルの鍵つき記事
がすべて読める!
- 2医療専門家に電話相談できる!(24時間365日)
- 3信頼できる名医の受診をサポート!※連続して180日以上ご利用の方限定
お知らせINFORMATION

SNS
日経グッデイをフォローして、
最新情報をチェック!
人気記事ランキングRANKING
- 現在
- 週間
- 月間
-
「γ-GTP」だけ見ていては見逃される、肝臓の危険なサインとは?
忍び寄る肝臓の危機
-
「ワキ汗」に悩む人に朗報 副作用の少ない保険適用薬が登場
医療・健康トレンドピックアップ
-
「地頭を良くする方法はある?」「もの忘れが気になる」 脳医学者が回答! あなたの疑問に専門家が回答! 健康Q&A
-
「脳にいい食事は?」「家でできる脳の活性化策は?」 脳医学者が回答!
あなたの疑問に専門家が回答! 健康Q&A
-
「血圧は下げたい、でも減塩は…」 そんな人にお勧めの「塩出し食」とは 「高血圧」改善で、健康寿命を延ばす
-
「冬になると心臓が痛い」「心電図に異常はないが、不整脈かも…」名医が回答 あなたの疑問に専門家が回答! 健康Q&A
-
コロナ太り解消の秘策 「階段を上る」にもコツがある
ストレス解消のルール
-
「計算能力の衰え、大丈夫?」「怒りっぽくなった」 読者の悩みに回答! あなたの疑問に専門家が回答! 健康Q&A
-
自分の体は柔らかくならないと思っている人にトレーナーがする話 中野ジェームズ修一のカラダお悩み解消講座
-
新型コロナワクチン、現時点での安全性を確認
トピックス