がん検診の目的が早期発見でないのはなぜ?
早期で発見した「寿命に影響しないがん」は検診のメリットが小さい
田村 知子=フリーランスエディター
【ギモン2】早期発見できても有効な検診とは限らないの?

がん検診による最大のメリットは、早期発見によりがん死亡率が減少することです。個人レベルで言えば、「がんの死亡リスクが減少すること」になります。
例えば、がん検診でがんが発見され、治療で治った場合、「検診による早期発見のメリットがあった」と考える人が多いかもしれません。しかし、実際にはそうとは限らないのです。検診には複雑な、いわば“だまし絵”のようなからくりが潜んでいます。
がん検診で早期に発見されたがんには、「検診のおかげで助かるがん」のほかに、「仮に検診を受けていなかったとしても、寿命には影響しないがん」も存在します。がんの種類によっては後者が大半であるがんもあります。発見された段階では、そのどちらのがんなのか区別がつかないので、早期がんが多く見つかるだけでは、検診の効果があるかどうかはわからないのです。
早期で発見した「寿命に影響しないがん」は検診のメリットが小さい
また、「寿命に影響しないがん」の中にも、解釈に注意しなければいけないものがあります。
その1つが、「検診を受けなくても、症状が出てから患者として病院を受診し、診断、治療をしても治癒するがん」です。その中には、症状を自覚するまでに進行しないがんも含み、そういったがんは、検診を受けなければ気づかれることもなく、何の支障も来すことなく寿命を全うする可能性も考えられます。
検診で早期発見されたがんには、「検診のおかげで助かるがん」のほかに、このような場合も含まれるのです。前述した通り、個々のがんが、どれに当てはまるかは決して知ることはできません。
寿命に影響しないがんも、検診を受けると「検診のおかげで早期発見され、治った」ように見え、一見検診に効果があるように見えますが、そうではないのです。不必要な治療を受けたとしたら、それは大きな不利益となってしまいます。
このような背景があるため、本当に検診の効果があるかどうかは、検診でがんによる死亡が免れたかどうかでしか判断できないので死亡率しか指標にならないのです。
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