自治体と人間ドックのがん検診、何がどう違う?
自治体検診の目的は「死亡率低下」、人間ドックは「早期発見」
田村 知子=フリーランスエディター
任意型は個人のニーズに応える検診
任意型検診の目的は、主に受検者のがんを早期に発見し、正しく診断することです。 任意型検診は医療サービスであるため、提供される検査は幅広く、中にはがん検診として科学的根拠がまだ確立していない検査、体に多少の負担がある検査、高額な検査なども含まれています。がんの発見ばかりに主眼を置くため、検診を受ける人が被る何らかの苦痛が考慮されていないことがよくあるのです。
任意型検診では、検診を受ける年齢や間隔は、本人の意思に任されているので、個人が自分の好みや目的に合わせて検査を選べる半面、死亡リスクが確実に下げられる保証はなく、また、一般に精度管理の仕組みを持たないので、質の管理は施設側の判断にゆだねられています。
対策型・任意型のメリット・デメリットを理解しておく
対策型検診は健康な人(健康と思われる人)が対象のため、もともとがんであるリスクは低く、がんが見つかる人の割合は、1000人に2~3人程度です。一方、任意型検診はがんを見つけることに重きを置きがちであるため、感度(*2)の高い検査が実施されるケースが多く存在しますが、命に別状がないがんを無駄に発見してしまう「過剰診断」の問題が対策型よりも多くついて回ります。
*2 がん検診において感度とは、ある検査が、がんのある者を「陽性」と正しく判定する割合。「感度が高い」ことは、見落としが少ないことを意味する一方で、偽陽性も含む可能性がある。
いずれのがん検診を受ける場合も、こうした違いをよく理解しておくことが重要です。「健康だから、がん検診は受けなくても構わない」と考える人がいますが、健康だからこそ、科学的根拠に基づくがん検診を、定期的に活用していくことが大切なのです。
対策型 | 任意型 | |
対象者 | 健康な人(*3) 科学的根拠に基づく一定の対象年齢の者 | 定義されない(*3) |
目的 | 対象集団全体のがんの死亡率を下げる | 個人のがんを早期発見し、死亡リスクを下げる |
検査 | 科学的根拠がある | 感度が高いものの、科学的根拠がないものが選ばれることもある |
メリット・デメリット | デメリットよりメリットが上回る | より大きなメリットも期待できる一方で、メリットが小さく、 大きなデメリットがある可能性もある |
監修/斎藤博さん(国立がん研究センター がん予防・検診研究センター 検診研究部部長)
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