日経グッデイ

尾川とも子のボルダリング入門

コツを知るだけで初心者でも登れる!ボルダリングの前傾壁

第11回 前傾壁に挑む

 鶴見佳子=フリーライター

垂直壁を登るのに慣れてくると、次にチャレンジしたくなるのが「前傾壁」。壁が傾いているだけで難しそうだが、先輩たちは軽々と楽しんでいるように見える。傾斜があってもボルダリングの基本は同じ。重力に負けない攻略法を身に付けよう。

前傾癖の基本姿勢は「腕はまっすぐ、足は腰の高さ」

 「私だって初心者のころは、こんな傾いた壁に人間が登れるの?って思ったんですよ」と尾川さんも話す、前方に傾いた「前傾壁」。垂直壁(90度)より前に10度傾いた100度の壁や120度、130度など傾き度合いはいろいろあるが、100度程度の傾きでは垂直壁とあまり変わり映えがしないので、初心者は110度くらいから始めてみよう

 前傾壁の基本姿勢は下の写真の【2】のような感じ(※写真は傾斜が分かりやすいよう120度で撮影しました)。まず、両手で持ちやすいホールドを探す。そのホールドを両手で持ってぶら下がり、足を床から離してみる(写真【1】)。次に手を伸ばしたまま、腰の位置にあるホールドに両足を乗せる(写真【2】)。足は、肩幅と同じ程度に広げる感じ。壁の傾斜がこれより緩い場合も、強い場合も、基本は同じだ。

【1】
腕を伸ばし、ぶら~んとぶら下がってみる。自分の体の重さを腕にずっしり感じ、愕然とするかも
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【2】
腰の位置にあるホールドに両足を乗せる。足は肩幅に開いて
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 ちなみに、下の写真は基本の姿勢のNG例だ。このように腕を曲げて体を壁にくっつけると、腕が疲れやすくなる。腕は伸ばし、体を壁から離すようにしよう。

【3】NG例
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体を壁にくっつけると、腕が曲がって疲れやすくなるので、腕を曲げてはダメ!

動くときは動的ムーブを「ダイアゴナル」で

 次のホールドに向けて腕を伸ばす時は、体をホールドのある方向とは反対側に軽く揺すって勢いをつける。さらに、出す手と同じ側の足の膝を内側に向けて体を軽くひねり、壁と体の間のスペースを少ない状態のまま次のホールドに腕を伸ばす。この連載の第9回で紹介した、“動的ムーブを「ダイアゴナル」で”という動きと同じだ。

 例えば、右方向に次のホールドのめどをつけたら、いったん左方向へ体を揺すり、次に振り子のように、右膝を内側にひねりながら体を右へ振る。その勢いにのせて右手を上げ、右上にあるホールドを取るのだ。

右上にあるホールドを取りに行く場合、右膝を内側(ホールドのある側とは反対側)にひねり、壁と体の間の空間を小さくしつつ腕を伸ばす。軽く勢いをつけて体を動かさないと、スタティック(静的)な動きは腕が疲れやすく初心者には難しい
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上から見ると、体をひねっていることがよく分かる
体をひねらず、体の正面を壁に向けたまま腕を伸ばそうとすると、ホールドを持っている腕に力がかかり過ぎ、疲れやすいので要注意
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 右膝を内側にひねる時には、壁と体の間のスペースを少なくする感じで。この形を「傾斜を殺す」という。ホールドを持つ左手は縮ませず、伸びているままで。

 初心者の場合、基本的にはこの動きで、右手、左手、右手、左手と登っていけばいい。足の動きは基本通り。つまり、手を動かしたら、次は体のバランスが二等辺三角形になるように足を動かして肩幅に開いて置き、そのうえで、次に腕を出す方の膝を内側にひねりながら次のホールドに腕を伸ばすのだ。これを繰り返すことで、次第に前傾壁に慣れてくるはずだ。

さらに強い傾斜の場合は?登り方の基本は同じ

 傾斜に慣れてきたら、壁の角度をさらに大きくしよう。登り方は基本的にどの角度でも同じ。前傾壁は、腕だけで登ると疲れてくるので、体全体をうまく使うように。

 特に初心者の時は、前傾壁をスタティック(静的)に登ると、片方の腕に負担がかかってしまい、辛くなる。勢いを利用してダイナミック(動的)で登る方が腕への負担も軽く、短時間で動け、体力を節約できる。

 「難しそうに見えても、登るのを楽しむことを忘れないで。まずはその前傾壁に触って(挑戦して)みましょう。体を振り子のようにうまく使う動きを、体で覚えていきましょう」と尾川さんは話す。

■尾川とも子のボルダリング入門
第1回 東京五輪で注目のボルダリング、運動オンチの40代でも楽しめる?
第2回 ボルダリングを安全に楽しむ!お薦め準備体操とNG行動
第3回 初心者必見!ボルダリングのルールと基本の動き
第4回 ボルダリング初心者が覚えたい、ホールドの効果的な持ち方
第5回 ボルダリングシューズ、初心者は「痛くない」を重視して!
第6回 ボルダリングで次のホールドに手が届かないときの対処法
第7回 足を乗せにくいホールドの攻略法
第8回 ホールドの特徴を知ってボルダリングの技術UP
第9回 ボルダリングの基本ムーブをマスターする
第10回 ボルダリング攻略の要はオブザベーションにあり


(写真:水野浩志)

(衣装協力:アディダスジャパン、ネルソンクライミングジャパン〔MAD ROCK Flash 2.0〕/ 撮影協力:ボルダリングジムHAGO〔大阪府吹田市〕)

尾川とも子(おがわ ともこ)さん
プロクライマー
尾川とも子(おがわ ともこ)さん 宇宙飛行士を目指して進学した早稲田大学理工学部応用物理学科卒業。在学時の2000年、国体山岳競技に誘われたことがきっかけで、クライマーの道に。2003年、2006年には「Asian X-games」で優勝。その後は自然界の岩場へのチャレンジに魅力を感じ、2008年4月に日本人女性初となる難度V12を達成。2009年秋から女性では前人未到の難度V14の岩に挑み始め、2012年10月に完登した。
ブログ:尾川とも子のはーとふるボルダリング