救命救急医に聞く! 正しい診断を導くための話し方・伝え方のポイント(前編)
問診票にはびっしり書いてほしい
梅方久仁子=ライター
数字を使って、具体的に
時間による経過が重要なのですね。それを伝えるときに、気を付けることはありますか。
沖山 「最近」とか「ときどき」といったあいまいな表現ではなく、できるだけ「3日前」「1週間に1回くらい」といった数字で表現していただければと思います。
それから、医師でも患者さんでも、人は自分の経験したことは相手も分かっているだろうと思いがちです。しかし、人によって経験は様々ですし、やはり言わなければ分からない部分もあるので、できるだけ言葉にして正確に伝えることが大事だと思います。
表現の仕方で勘違いしそうな言葉はありますか。
沖山 実は、医療の場面で誤解しやすい言葉はいくつかあって、「この言葉には気を付けなさい」と医学の教科書に書かれているくらいです。
例えば「めまい」といっても、止まっているのに揺れているような感じのことだったり、急に立ち上がったときにくらっとすることだったりしますよね。「貧血」も、医学的には血液検査で血色素量(ヘモグロビン濃度)が一定値より少ないことを指しますが、「朝礼で立っていたら貧血で倒れた」とも言います。朝礼で倒れるのは、医学的には起立性低血圧という血圧の問題なのですが、一般的には貧血と呼ぶ人が多いでしょう。
ただ、医学知識がない患者さんに「こういう言葉に気を付けて」と言って実行していただくのは難しいと思います。そのあたりは医師が気を付けて質問しますので、あまり気にしなくて大丈夫です。もし患者さん側で気を付けていただくとしたら、起こったことをなるべく具体的に話すことだと思います。例えば「昨日、めまいを起こしたんです」という言い方ではなく、「立ち上がった瞬間に目の前が暗くなって、意識を失いそうになりました」と説明していただくと医師にはよく分かります。
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