正解は、濡れっぱなしです。
空気の乾燥に3つの“ぱなし”が加わると、かゆみは悪化
冬になるとなんだか体がかゆい…。そんな現象を、多くの人が経験していることでしょう。「かゆみをもたらす病気や皮膚の異常がない人が、冬場に体がかゆくなるのは、空気が乾燥することで皮膚の表面が乾燥し、バリア機能が低下するためです。ただ、皮膚が乾燥すれば誰もがかゆみを感じるわけではなく、それに加えて加齢や、かゆみを誘発する生活習慣が大きく影響しています」。皮膚科専門医の小林美咲さん(小林皮膚科医院院長)はそう説明します。
人間の皮膚は、年齢を重ねるごとに表面を覆う皮脂(毛穴の奥にある脂腺から分泌される脂肪)が減っていき、皮膚の表面から水分が蒸発しやすくなります。すると皮膚は乾燥し、バリア機能が低下します。また、年をとると皮膚の新陳代謝の周期が遅くなるため、ダメージを受けても修復されにくくなっていきます(図1)。
こうした状態に、冬場の乾燥が加わることで、さらに皮膚の乾燥が進み、ちょっとした刺激に敏感になり、かゆみとなって現れるというわけです。
小林さんは、加齢や空気の乾燥だけではなく、日本人に多く見られる「間違った生活習慣」が、かゆみの元凶となっているケースがかなり多いと話します。それが、3つの“ぱなし”。すなわち「汚れっぱなし」「濡れっぱなし」「こすれっぱなし」――の3つです。
頻繁な入浴は皮膚をかえって乾燥させる!
まず、「汚れっぱなし」は、皮膚に汚れがついたまま、放置されている状態。皮膚の汚れには、垢、汗、皮脂、常在菌、尿、便などの「体の内側から出てくる汚れ」と、ほこり、洗剤、化粧品、飲食物など、「外側からくっつく汚れ」があります。「汚れは皮膚への刺激になり、炎症を起こすなどトラブルの種になります」(小林さん)。
次に、「濡れっぱなし」は、(1)長時間の水仕事や、頻繁な入浴、水泳などで、体が濡れている時間が多いこと、(2)体が汗や水で濡れたときによく拭かないこと――によって、皮膚表面の角質層がふやけてしまう状態です。角質層がふやけると、角質の間に隙間ができ、角質層に蓄えられた保湿成分(細胞間脂質〔セラミド〕や天然保湿因子)が溶けだして、保水力を維持できなくなってしまうのです。
「かゆみを訴える患者さんに一番多くみられるのは、お風呂の入りすぎと洗いすぎです。最近は、健康のためにジムに通う人も増えていますが、毎日ジムで汗をかいた後にシャワーを浴びて、帰宅後にまたお風呂。そうやって1日に何度も入浴していると、皮膚の角質層がふやけてしまいます。年齢を重ねるほど肌は乾燥しやすくなるので、お風呂は2日に1度くらいのほうが、皮膚のためには良いのです」と小林さんは話します。
「肌が乾燥しているなら、入浴したほうが潤うのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、それは誤解です。入浴直後は潤っても、ふやけた角質層は保水力をなくし、水分はすぐに蒸発して、15分もすれば入浴前より乾燥してしまいます。特に、熱いお湯に長時間浸かると、角質層がふやけて隙間ができ、そこから皮脂や保湿成分が必要以上に溶け出してしまいます。
熱いお湯での入浴や、長風呂は避け、入浴は38度から40度くらいのぬるめのお湯に数分浸かるくらいが、皮膚のためには良いのだとか。上がった後は、身体全体をよく拭きましょう。また、化粧水のつけすぎも、角質層をふやけさせる原因になります。「化粧水には、グリセリンのような保水力のある成分が含まれていて、皮膚の表面をしっとりさせる効果があります。ただし、皮膚につけた水分は内部まで浸透するわけではありません。びちゃびちゃの状態が長く続くと、やはり角質層がふやけて傷つき、かえって乾燥しやすくなってしまいます」(小林さん)。
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