こうした話を聞いて、「あるある!」と思い当たる方も多いのではないでしょうか。同じく時を重ねてきているにもかかわらず、50歳で驚くほど若く見える人がいる一方で、別の人は10歳以上年を取って見える…というケースは少なからずあります。できることなら前者でありたい、というのは多くの人が望むことでしょう。また、最近の60歳の人は昔に比べて元気で若々しい、などという話もよく耳にします。実際そう感じている人も多いでしょう。
では、そうした差はどこから来るのでしょうか。生まれる前から遺伝によって決められているものなのでしょうか?
「デンマークの一卵性双生児を対象にした研究などから、老化に対する遺伝の影響は15~25%で、残りの75~85%は生活習慣や環境によって変わることが分かっています。つまり、遺伝より、食事や運動などの生活習慣や、光への当たり方などの環境のほうが老化への影響は大きく、自分の努力次第で老化の進行のスピードを緩やかにし、実年齢より生物学的年齢を若く保つことは可能ということです」と早野さんは指摘します。
老けている人は、体の中も老化している可能性あり
自分の生物学的年齢がどのくらいなのかは簡単には分かりませんが、70歳以上の同性の一卵性双生児約900組を10年間追跡し、見た目年齢と死亡率の関係を調べた研究(*3)は興味深いものです。
この研究では、女性看護師20人と男性教育実習生10人、高齢女性11人が判定した平均値で、見かけ年齢を算出しています。その結果、100%同じ遺伝子を持つ一卵性双生児でも、実年齢は70歳なのに、一方は64歳、もう一方は74歳に見えるというように、見た目年齢には10歳もの開きがある場合もありました。そして、見た目年齢が老けて見えるほうが、明らかに先に死亡する確率が高いことも分かりました。見た目が老けている人は、体の中も老化している可能性が高いというわけです。
老化に関する研究が進む中、世界の研究者の注目を集めているのが、いつまでも若々しい心と体を維持し、健康寿命をいかに延ばすかという「抗老化研究」です。はたしてどんな生活習慣や環境が「抗老化」という点で有効なのか、最新の研究から目が離せません。