正解は、(4)早歩きのウォーキングを毎日1時間 です。
長時間「座りっぱなし」の人は死亡リスクが高まる
いすに座って作業をしたり、ソファに寝転んでじっとしていたりという、「座りっぱなし(座位行動)」の時間が長くなればなるほど、死亡リスクが高まり、肥満、糖尿病、心疾患、脳卒中、がん、うつ病、認知機能の衰えなどにも影響することが、近年の研究で明らかになってきました(図1)。長時間座っていることで下肢の筋肉が使われないと、代謝機能の悪化や血流の低下、血圧の上昇を招くことなどがその原因であると考えられています。
世の中が便利になったことで、現代人は体をこまめに動かす機会が減っています。さらに、「新型コロナウイルスの影響で外出が減り、テレワークの導入が急速に進んだ結果、家で座りっぱなしで過ごす時間がどんどん増えています。こうした不活発な時間の増加による健康状態の悪化が、今後じわじわと進んでくるのではないかと心配しています」と、早稲田大学スポーツ科学学術院教授の岡浩一朗さんは話します。
「座りっぱなし」を運動で相殺するのはなかなか大変
平日は座りっぱなしの時間が長くても、週末に運動をすれば大丈夫だと思う人も多いでしょう。しかし、そう簡単にはいかないようです。
米国では、カウチ(長椅子)に座りっぱなしで、ポテトチップスを食べながらテレビを見たりしてダラダラ過ごす人を、「カウチポテト」と呼びます。これにちなんで、週末などの限られた時間は運動をしてアクティブに過ごしながら、その他の時間は座りっぱなしで過ごす人たちのことを、座位行動の研究者たちは「アクティブ・カウチポテト」と呼んでいます。「アクティブ・カウチポテトの人たちは、『自分はしっかり運動しているから大丈夫』と安心してしまい、運動以外の時間はほとんど動かず、座りっぱなしで過ごしています。しかし近年、こうした人たちでも死亡リスクが増加することが分かってきたのです」(岡さん)
岡さんによると、座りっぱなしによる死亡リスクの上昇を、運動によって相殺するためには、中強度の身体活動を1日60~75分は行う必要があるといいます。これは、2016年に公表された研究の結果(*1)で、座位行動に関する複数の研究を統合した計100万人以上の男女のデータを解析したものです。
この研究では、運動強度の単位である「メッツ」と「時間」を掛け合わせた「メッツ・時(MET-h)」が週に35.5以上のグループのみ、1日に座っている時間の長さが死亡リスクに影響を与えていませんでした。週に35.5メッツ・時以上の運動というのは、早歩きのウォーキングを毎日1時間以上行うくらいの運動量に相当します。このレベルの運動習慣がある人は、「アクティブ・カウチポテト」で過ごしてもそれほど心配しなくてもよさそうですが、忙しい現代人にとっては、これだけの運動量を日々確保することはかなり難しいのではないでしょうか。となれば、「座りっぱなし」の時間を少しでも短くする方が、簡単かつ確実に実行可能な健康法となります。
「『座りっぱなし』をやめるには、まず、長時間座っていることは体に良くないと強く意識することが大切です。何かに熱中していても、ときどき『しまった、座りっぱなしだ!』と気付いたら、少し立って歩くようにしてください」と、岡さんは話します。
具体的に、何分に一度立ち歩けば病気になるリスクが減るのかについては、残念ながらまだはっきりしたエビデンスは得られていませんが、「まずは30分ごとに3分くらいのブレイク(中断)を目標にするといいでしょう。もし『30分刻みだと仕事に集中できない』という場合は、1時間に5分でもいいと思います」(岡さん)。その際、立つだけでは十分に筋肉が動かないため、少し歩き回ったり、その場で軽くスクワットをしたりして、下半身の大きな筋肉に刺激を入れるのがポイントです。テレビを見ているときならCMのたびに立ち歩く、立っていてもできる作業は立ったままする、といった工夫もお勧めです。
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