正解(間違っている記述)は、(2)未成年の飲酒は増加傾向にあるです。
未成年の飲酒は脳にダメージが!

「お酒は20歳から」――。未成年の飲酒が法律で禁じられていることを知らない人はいないでしょう。なお、2022年4月1日から、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられますが、飲酒は20歳以上というのは変わりません。
未成年の飲酒は体に悪影響を及ぼします。しかし、具体的にどのような害があるのかをきちんと説明できる人は少ないのではないでしょうか。未成年に対するアルコールの害や未成年の飲酒事情に詳しい久里浜医療センター院長の樋口進さんはこう説明します。
「未成年者の飲酒はさまざまな弊害があります。特に脳に対する影響が最も研究されています。具体的には、アルコールによる脳の神経細胞の障害作用は、成人よりも未成年者のほうが大きいのです。記憶に関わる海馬に対するダメージは大きく、これによって記憶機能が低下する可能性があります」と樋口さんは話します。
「大量飲酒をした場合、まったく飲まない未成年と比較して、海馬の容積が明らかに小さいことも分かっています。これはアルコールによって海馬の神経細胞が死に、容積が小さくなったということです」(樋口さん)
樋口さんは、大人の脳が完成するのは20歳前後なのだと話します。「人間の脳は生後6歳までに大人の大きさの90~95%になります。脳内の細胞の成長のピークは男子が11歳、女子が12歳半ですが、20歳前後まで成長が続き、その後、成熟した脳へと変化していきます」(樋口さん)。
さらに樋口さんは、未成年の飲酒は、血中アルコール濃度が上がりやすく、急性アルコール中毒のリスクが高まると警告します。
「人間の未成年者に飲酒させることはできないため、人間を対象にしたデータはありませんが、動物を対象にした研究が多数あります。未成年に相当するラットと成人に該当するラットに同量のアルコールを投与して比較した研究では、未成年のラットは成人のラットより、血中アルコール濃度、脳内アルコール濃度が高くなり、アルコールの分解速度が遅いという結果になりました(Alcohol Clin Exp Res. 1987;11(3):281-286.)。人間においても同様の傾向になると推測されます」(樋口さん)
また一般的に「飲酒経験がないほど、脳が敏感に反応し、酔いの程度が強くなる」と樋口さん。自分の適量すら分からない未成年は、酒のやめ時を知りません。急性アルコール中毒になるリスクは大いにあるのです。
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- 飲み始めるのが早いほど、依存症のリスクが