高尿酸血症でも、必ずしも痛風になるわけではない
ところが、高尿酸血症になっても全員が痛風になるとは限りません。高尿酸血症患者のうち、痛風発作を起こす人は一般に1割程度などともいわれます。そう、発作を起こさない人(無症候性高尿酸血症)の方が多数派なのです。中には10mg/dLを超えても発症しない人もいます。
研究報告や人種によって発症頻度に違いが見られますが、久留さんは「8.0mg/dLを超えると、5年間で3割程度の人が痛風を発生すると考えてください」と話します。
実際、台湾でのコホート研究では7.0~7.9mg/dLで5年以内に痛風発作を起こす人は10.8%、8.0~8.9mg/dLで27.7%、9.0mg/dL以上で61.1%となっています(J Rheumatol. 2000;27:1501-1505.)。
また、アメリカにおける約15年間のコホート研究では、痛風の5年間の累積発症率は、7.0~7.9mg/dLで2.0%、8.0~8.9mg/dLで4.1%、9.0~9.9mg/dLで19.8%、10.0mg/dL以上で30.5%となっています(Am J Med. 1987;82:421-426.)。
高尿酸血症は「全身病」、放置は厳禁!
これらのデータを見て、「意外と痛風を発症する割合は低いのだな…」と思われた人も少なくないと思いますが、だからと言って高尿酸血症を放置してはいけません。
対策を打たずに尿酸値が上がっていけば、痛風リスクは着実に高まるだけでなく、様々な病気のリスクを高めることになるからです。
久留さんは、「高尿酸血症による“全身の”疾病発症のリスク」についてこう説明します。
「高尿酸血症は一般に、痛風リスクの観点から局所的な関節の病気のリスクとして取り上げられることが多いですが、高尿酸血症は『全身病』です。近年、高血圧、糖尿病などの生活習慣病、それに腎障害、心血管障害などとの関連性を指摘する報告が次々となされています。過剰な尿酸を各臓器の細胞が取り込んで、臓器障害が起こるメカニズムも明らかになってきています」(久留さん)。
最も典型的なのが腎臓に対する影響だと久留さんは話します。「近年の研究から、尿酸値を下げることで腎臓を保護できることが明らかになりました。それを受け、2018年12月発行の『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版』では、腎臓を保護するために尿酸値を下げましょうという推奨文を世界で初めて出しました」(久留さん)
痛風発作が起きない限り、ついつい放置してしまいがちな尿酸値ですが、痛風リスクだけでなく、様々な病気のリスクが高まることが明らかになってきた今こそ、認識を新たにして尿酸対策に取り組んでいただきたいと思います。
尿酸対策は、食べ過ぎ、飲み過ぎ、それにプリン体を多く含む食品を控えるといった食生活面の対応、そして有酸素運動などの運動面の対策が大切です。これらの多くは、他の生活習慣病の予防、さらにはがん予防の対策とも重なります。実践すれば二重、三重のメリットが得られます。ぜひ実践してください。