毛細血管が減少し始めるのは40代から
では、毛細血管のゴースト化は何歳くらいから始まるのでしょうか。
伊賀瀬さんは、「毛細血管のゴースト化は老化現象の1つです。体内の細胞は新陳代謝を繰り返して、新しい細胞に入れ替わっています。一般に40代くらいから新陳代謝が低下しますが、同様に毛細血管のゴースト化も始まると考えてください」と話します。
伊賀瀬さんは、毛細血管が加齢とともに減少することを示すデータも出ていると話します。「加齢による毛細血管の変化を調べた研究では、20代の毛細血管の量を100%としたとき、60代、70代では約4割も減ると報告されています」(伊賀瀬さん)。
毛細血管が減るといっても、もちろん全員が一律に4割減るわけではありません。「早ければ20~30代でゴースト化が見られる人がいる一方で、高齢でも健康な毛細血管を維持している人もいます。進行度合いには個人差があります」(伊賀瀬さん)
個人差があるとはいえ、ゴースト血管は40代から始まっているのです。この言葉に、「40代なんてまだ働き盛りじゃないか」と驚く人もいるでしょう。伊賀瀬さんは「加齢とともに多かれ少なかれ体の機能は落ちるので、ゴースト血管が増える(=毛細血管が減る)のを完全に避けることはできません。しかし、もう手遅れだろう、とあきらめることはありません」と話します。
「ゴースト血管には、食生活や運動などの生活習慣が関係することが分かっています。逆に言えば、ゴースト化を進めるような生活習慣を改善すれば、毛細血管の健康を維持できるということです。毛細血管には、血管を新たに作る、『血管新生』という仕組みが備わっています。生活習慣を良い方向に変えれば、何歳からでもゴースト血管対策は有効です。一度ゴースト化した毛細血管も再生できます」(伊賀瀬さん)
食事と運動を工夫すること、つまり生活習慣を改善することで、ゴースト化を防ぎ、毛細血管を増やせるというわけです。食事面のポイントは、糖化の原因となる糖質のとり過ぎを避けたり、ポリフェノールなどの抗酸化成分を含む食品を意識してとる、AGEが多く含まれる揚げ物、焼き物に偏った食事を避けることなどです。運動面ではウォーキングなどの有酸素運動の実践、そして特に第2の心臓と呼ばれる「ふくらはぎ」を鍛えることが大切です。