正解は、(3)病気などの条件によるです。
Jカーブ効果は、すべての病気にいえるわけではない
「酒は百薬の長」という言葉があるように、昔から「お酒は適量摂取」なら健康効果があるといわれています。
「適量を飲む分には死亡率が下がるが、一定量を超えてくると、死亡率が上がってくる」という現象を、専門用語で「Jカーブ効果」といいます。飲酒量を横軸に、死亡率を縦軸にとると、グラフの形状が「J」の字に似ることからそう呼ばれています。
このJカーブ効果、本当なのでしょうか。そして、すべての病気、すべての人に対して同じ傾向を示すのでしょうか。
独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センター院長の樋口進さんは、「コホート研究などにより、飲酒と総死亡率についてはJカーブ効果が認められています。ただし、すべての疾患に対してあてはまるわけではありません。つまり、病気によっては、少量の飲酒でも悪影響を及ぼす可能性があります。少量の飲酒がすべてに対していい効果が出るというわけではないのです」と話します。
樋口さんによると、飲酒量と健康リスクについては、欧米や日本で研究が進められており、飲酒量と総死亡について「Jカーブ」の関係にあることが示唆されているそうです。「欧米人を対象とした14の研究をまとめて解析し、1996年に発表された報告では、男女ともに1日平均アルコール19gでの飲酒者の死亡リスクは非飲酒者より低くなっています」(Holman CD,et al. Med J Aust. 1996;164:141-145.)。
国内でも、大規模コホート研究により、適量飲酒が死亡リスクを低下させているという結果が出ています(Ann Epidemiol. 2005;15:590-597.)。これは国内の40~79歳の男女約11万人を9~11年追跡した結果で、総死亡では男女ともに1日平均23g未満(日本酒1合未満)で最もリスクが低くなっています。
このような国内外での報告から、「適量飲酒は死亡率を下げる」ということが通説となっているわけです。なお、樋口さんは、次のように補足します。「コホート研究の結果によって、少量飲酒者の死亡率が低いという結果が出ていることは確かです。しかし、これは飲酒との因果関係を示すものではありません」。また、「Jカーブ効果が認められているのは、先進国の中年男女だけ」(樋口さん)なのだそうです。