正解は、(3)背景に女性ホルモンの急激な減少がある です。
手の痛みやしびれ、こわばりから始まる手の変形性関節症
中高年になると全身のあちらこちらに出てくる、関節の悩み。特に更年期以降の女性に多いのが、手指の痛み、しびれ、起床時のこわばりとともに指が変形する、手の変形性関節症です。
四谷メディカルキューブ 手の外科・マイクロサージャリーセンター長の平瀬雄一氏によると、手の変形性関節症は、症状がある場所によって名称が異なり、一番多いのが、指の第1関節に起こる「へバーデン結節」。これに第2関節の「ブシャール結節」、親指の根元の関節に起こる「母指CM関節症」を合わせた3つが、代表的な手の変形性関節症です(図1)。そのほかに更年期に多いものとして、手のしびれを起こす「手根管症候群」、指の曲げ伸ばしが困難になる「ばね指」、親指側の手首が腫れて痛む「母指ドケルバン病」などがあります。
「いずれも手の痛みやしびれ、こわばりから始まります。関節が変形するのは、最初の指のこわばりを感じてから7~10年後のことです。よくあるのは、初期症状に気づき、関節リウマチを疑って受診するパターンです。しかし、関節リウマチと違い、変形性関節症は血液検査で異常がなく(*1)、初期のうちはX線検査でも関節の変形が確認できません。そのため、『年齢のせいだろう、使いすぎだから仕方ない』と我慢して過ごす人が多く見られます」と平瀬氏は話します。
手関節の変形の原因は「年のせい」「手の使いすぎ」とは限りません。「受診者のほとんどは更年期、あるいはそれ以降の女性です。女性の中でも若い人の発症はまれで、かといって80代、90代の高齢女性にも多くないため、必ずしも加齢とともに増えるとは言えません。また、手の変形性関節症は、左手の薬指から始まることもありますが、この指だけをよく使う人はいません。つまり、手の使いすぎで起こるとも限らないわけです」(平瀬氏)。
背景にエストロゲン分泌量の急激な低下
平瀬氏によると、手の変形性関節症の真の原因として最近考えられているのが、女性ホルモンの1つ、エストロゲン分泌量の急激な低下です(図2)。「エストロゲンは、全身の『エストロゲン受容体』と結合することで機能します。エストロゲン受容体にはαとβがあり、αは子宮や卵巣、乳腺に、βは骨や関節などに存在します。閉経してエストロゲンの分泌量が下がると、結合するはずのエストロゲン受容体に空席ができ、バランスが乱れてさまざまな不調をきたします。これが更年期障害です。手の関節に起こる症状もその1つで、関節や腱の周囲にある滑膜という薄い膜が腫れ、やがて変形するようになります」(平瀬氏)。
変形性関節症をそのまま放置すると、多くの場合は軟骨がすり減って関節の隙間がなくなり、骨同士がぶつかって削れ、変形は次第に進んでいきます。早めに発見すれば変形を抑えることも可能なので、手指の痛み、しびれ、起床時のこわばりなどを感じたときは、早めに受診しましょう。
「日本手外科学会が認定する手外科専門医は全国に1000人以上いるので、学会ウェブサイトの専門医名簿が参考になります。ただし、手外科では外傷や先天異常、腫瘍なども扱うため、指の変形性関節症を専門とする医師とは限りません。変形性関節症を診療しているかどうか、医療機関のウェブサイトを確認してから受診するといいでしょう」と平瀬氏はアドバイスしています。