正解は、(2)下りの動きです。
山登りでは上りと下りで使われる筋肉が異なる

山登りは、ウォーキングやランニングと同じ有酸素運動の一種ですが、「横移動」よりも「縦移動」がメインなので、ゆっくり登ったとしても、大量のエネルギーを消費します。
プロスキーヤーで、父・三浦雄一郎さんとエベレスト親子同時登頂を果たした経験もある三浦豪太さんによると、登山では、約100mの標高差を登っただけで、横に約3km移動したのと同じぐらいの運動量に匹敵するのだそうです。さらに、どんな人でも2~3時間は持続して運動することになるため、運動量、行動時間を考えると、山登りは「最もエネルギー量の消費が激しい有酸素運動」と捉えることができる、と三浦さんは話します。
ただし、山登りの場合、上りと下りでは使われる筋肉が異なります。筋肉には、短距離走やスキーなど、瞬発力を必要とする運動に使われる「速筋繊維」と、ウォーキングやランニングなど、ゆっくりした持続的な運動に使われる「遅筋繊維」の2種類がありますが、山登りでは、上りで遅筋繊維、下りは速筋繊維がメインに使われます。
山を下る時は、加速がついて転倒してしまうことを避けるため、瞬時にブレーキをかける動きが必要になります。「ブレーキをかけたとき、人間の脚は、自分の体重を受けとめながら、力を入れて筋肉を伸ばします。この運動はエキセントリック運動(伸張性収縮運動)と呼ばれ、普段の生活では行わない不自然な動きで、筋肉の内部を傷つけながら伸ばす状態になります。このとき使われるのが、太ももの大腿四頭筋などの速筋繊維です」(三浦さん)。
遅筋繊維は歳をとっても衰えにくい一方で、速筋繊維は加齢によって衰えやすいという特徴があります。「ですから、ある程度筋肉を鍛えないと、うまく下れません。登山でのケガのほとんどが下りで転ぶことによって起こるのはこのせいです。逆に言えば、登山をすれば、この遅筋繊維と速筋繊維がバランスよく鍛えられるので、加齢による転倒を防ぐことができるんです」と三浦さんは話します。
「山登り」では、速筋が鍛えられる下りの運動が特に、筋肉の老化予防に役立つというわけですね。年齢による体の衰えを感じている中高年の方は、気分転換を兼ねて山登り(山下り)を活用してみてはいかがでしょうか?