「60代ぐらいではまだ丈夫なので、脂肪を減らすことを優先させるべきですが、70~80代以降になると、筋肉と骨格系の衰えの方が死活問題になってきます。個人差はありますが、70代ぐらいになったら頭を切り替え、『やせないようにしっかり食べる』ことを優先した方がいいのです。栄養素では、たんぱく質をきちんと食べることが大事です」(新井さん)。
このように、従来は想像できなかった長寿社会になると、昔ながらのアドバイスが当てはまらない部分が出てきます。新井さんは、「もちろん百寿者には肥満の人はほとんどいませんので、若いころから食べ過ぎる習慣はなかったと思われます。でも、少食でもない。とりわけ高齢になってからは、むしろしっかり食べたほうがいいと、覚えておいてください」と話します。
寿命の上限はどこにある?
このように、平均寿命が延び続け、百寿者の数も年々増え続けていると、人間の寿命はどこまで伸びるのかも気になります。
新井さんは、「日本人の平均寿命は、今なお右肩上がりで伸び続けています。生物としての寿命の限界がどこかにあるだろうとは思いますが、それがどのあたりなのかを、過去の人口統計などから予測するのは困難です」と話します。
これに関して興味深い報告が出ています。2016年10月に、科学雑誌ネイチャーに「最高齢記録は1990年代以降伸びていない」という論文が掲載されたのです(Nature. 2016;538:257-259.)。「ギネスブックに載っている人類の最高齢は、122歳。97年に亡くなったフランス人女性ですが、これは一人だけ例外的に飛び抜けた記録です。それ以外の記録は概ね115歳あたりにとどまっていることから、『最長寿命は115歳ぐらいが限界だろう』と結論付けています」(新井さん)。