なぜ日本は認知症患者数が多いのか?
長寿研・鳥羽理事長に聞く!認知症を取り巻く現状と課題
伊藤左知子=医療ジャーナリスト
日本は4人に1人が高齢者という超高齢化社会。認知症の患者数は、OECD(経済開発協力機構)加盟諸国に比べかなり多い。なぜ日本は認知症患者数が多いのか、その理由や認知症に関する最新事情について、国立長寿医療研究センター理事長・総長の鳥羽研二さんに聞いた。第1回のテーマは「認知症を取り巻く現状と課題」だ。
日本の認知症患者数が世界の中で多いのはナゼ?

日本の認知症患者数は2012年時点で約462万人と推計されているが、厚生労働省は2015年1月に、全国で認知症を患う人が2025年には700万人を超えるとの推計を発表した。
国立長寿医療研究センター理事長・総長の鳥羽研二さんは、「日本の認知症患者数は、OECD(経済開発協力機構)加盟諸国に比べかなり多い」と話す。日本の認知症患者数が、世界の中でも多い理由として考えられるのは次の3つ、
(1) 日本人は遺伝的に認知症になりやすい
(2) 生活習慣が認知症になりやすい
(3) 日本の認知症の診断が優れている
だが、鳥羽さんは、「明らかに③、 日本の認知症の診断が優れているからだと考えられます」と言う。
「例えば、イギリスでは近年まで、認知症の診断率が1割にも満たなかったのです。最近は5割くらいの診断率に上がっていますが、まだまだ。一方、日本では、専門医だけでなく、非専門医でも7~8割の医師が認知症を診断できています」と話す。
逆に言えば、世界が日本の診断レベルに追いつくと、将来的に世界の認知症患者数は今の倍以上になるということである。「これは危機的な状況といえる」と、鳥羽さんは言う。
実際に、国際アルツハイマー病協会は、2015年8月25日、世界の認知症患者数は、現在の約4680万人から、2030年には7470万人、2050年には1億3150万人に増加することを明らかにしている。
この記事の概要
