認知症の学習療法 「効く」と信じる工夫で意欲が向上
学習療法を取り入れたデイサービス 現場リポート
伊藤左知子=医療ジャーナリスト
朝から帰るときまで脳のトレーニング
ふくろう舎では、学習療法の順番が来るのを待っている人や、終わった人は、別のスタッフとグループ学習を行う。学習療法の要素を取り入れた脳のトレーニングをして過ごす。ここでは、利用者がぼーっと待っている時間はない。
「ふくろう舎を選んで来てくださる利用者さんやそのご家族は、認知症を予防・改善したいという強い意識を持って来ていますので、皆さん、学習療法を筆頭に脳のトレーニングを積極的に取り組んでくださいます」と山口さんは話す。
学習療法の後は、機能訓練を目的とした体操を全員で行う。言語聴覚士(ST)が口腔(こうくう)体操を行う日もある。口腔体操は舌や口の周りの筋肉を鍛え、食べ物を飲み込む力をつけるのが目的。体をほぐしたら、昼食の時間だ。ふくろう舎では昼食時も脳のトレーニングが結びついている。

「ふくろう舎では、朝から帰るときまで、利用者の皆さんには認知機能を維持・改善するために過ごしてもらっています。昼食時も例外ではありません。ただ食事をするだけではなく、食前には調理師が料理に使われた、いわしやさんま、ブロッコリーなどの食材について、それらがいかに脳の活性化につながるかといった説明をします」と山口さん。
70歳代の女性利用者が「ここは昼食も脳にいい食材をたくさん使っていて、それを説明してくれるから、家でもまねができるのよ」とうれしそうに話していた。学習療法もそうだが、自分たちが今していることが、脳にどういうふうに効果があるのかを意識しながら取り組むことで、より脳の活性化に効果があると山口さんは話す。
午後は、工作活動(書道、絵手紙、調理実習など)の作業療法や音楽療法、回想法(思い出話をすることで認知症の進行を遅らせる心理療法)、フォトセラピー(写真を使った心理療法の一つ)を日替わりで行う。このようにして脳の活性化を促す1日が終わる。
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