80歳でも新しいことを 認知症の予防教室、現場を拝見
伊藤左知子=医療ジャーナリスト
認知症の予防策として注目されている「学習療法」。千葉県白井市では、高齢者の認知症予防や地域での仲間づくり、社会参加へのきっかけとして、学習療法の手法を取り入れた「白井脳いきいき教室」を行っている。実際に現場を訪れ、どのようなことが行われているのか、参加者はどんな様子なのかを取材した。取材を通して見えてきた学習療法の意外な効果、そして認知機能を維持・改善するための重要なポイントとは?
「毎回来るのが楽しくてしょうがない」
朝9時30分、70~90代の元気な高齢者たちが白井市保健福祉センターに続々と集まってきた。ここで、白井市がNPO法人白井市ボランティア連絡協議会と共同で運営している、認知症予防のための教室「白井脳いきいき教室」が開催されるのだ。これは公文教育研究会学習療法センターが提供する「脳の健康教室」の手法を取り入れた教室だ。
参加者はまず談話室として用意された部屋に入り、自由におしゃべりをしたり、机に用意されたゲームをしたりして、開始までの時間を過ごす。参加者同士で交流した後は、「読み書き」や「計算」など、脳のトレーニングをする「学習」のクラスを受ける。
1回のクラスに費やす時間は約30分。この日は10時から1クラス目が始まり、全部で3クラス行われる。定員は1回20人だが、談話室には早く来てもかまわないということで、スタッフも含めると、9時半の時点でかなりのにぎわいである。中には3クラス目に出席するという参加者もすでに来ていて、ここでの交流も参加者の楽しみの一つになっている様子がうかがえた。
10時になると鈴が鳴り、1クラス目を受講する参加者は隣の部屋へ移動する。そこには等間隔にテーブルが並べられていて、1つのテーブルに2人の参加者と1人の支援者が座る。白井脳いきいき教室では、学習を始める前に、独自の「梨トレ体操」を行う。梨トレ体操とは、白井市の名産、梨にちなんで作られた健康体操で、腕を胸のあたりから外側に大きく広げる「大きい梨」のポーズなどがあり、ご当地体操として市内で普及しているという。これを大きなスクリーンで、動画のインストラクターの動きに合わせて約2分30秒行い、軽く体を動かす。
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