80歳でも新しいことを 認知症の予防教室、現場を拝見
伊藤左知子=医療ジャーナリスト
参加者同士のつながりが長く続く秘訣
「白井脳いきいき教室」は、白井市の介護予防事業として市報などで募集・開催し、5カ月間で終了するが、希望者は白井市ボランティア連絡協議会の自主事業に参加して継続できる。もともとは2006年に白井市ボランティア連絡協議会が独自にスタートし、2009年に白井市介護予防事業として、市民・行政共同事業となり今日に至る。
「白井脳いきいき教室は、リタイアする人が非常に少ないんですよ」と話すのは、白井市役所高齢者福祉課保健師の矢野しのぶさん。長く続いてきたのには理由がある。
「5カ月間、参加者には同じ支援者が付きますので、来週も○○さんが待ってくれていると思うと、皆さんなんとなくうれしいし、行かないと悪いという気持ちにもなるようです。何より行って話をするのが楽しいので、続くのではないかと思います」と話す。
支援者だけでなく参加者同士がつながっていくことも、長く続く理由の一つのようだ。白井市役所高齢者福祉課高齢者支援班副主幹の松丸健一さんは、「支援者と参加者のつながりだけでなく、談話室での参加者同士の交流を楽しみにしている人も多いようです。お互いに刺激し合って、この場だけでなく、活動の場を広げている人も少なくありません」と話す。
聞けば、教室での交流がきっかけとなり、80歳で介護事業所のボランティア活動を始めたり、75歳で交通指導員となったり、80歳で盆栽の会を立ち上げるなど、活動の場が広がった人が多いという。
認知機能の検査で約半数が点数アップ
では、肝心の認知症予防はどうか。白井市ボランティア連絡協議会が初回の参加者121人を対象に、参加前と5カ月後でMMSE(認知機能の検査の一つ)を実施した結果、48%の人で点数が上昇した。33%の人は現状維持だったが、そのうちの33%は30点満点の現状維持だった。
もともと脳の健康教室は、健康な人、軽度認知症の人が対象なので、1年後や2年後にどうなるのかが気になるところだ。だが、少なくとも継続して教室に通い続けている参加者の脳や心の健康状態は、AさんやBさんらを見る限り、極めて高く維持されているように感じられた。
矢野さんは「参加者の表情がどんどん明るくなって、楽しんでいらっしゃるなと感じます。認知症予防は半年、1年続けたから、その効果が一生続くというものではなく、その後も継続していくことが大事。白井脳いきいき教室は、継続の意欲を維持できるシステムになっていると思います」と話した。
脳や心の健康状態を維持・改善するためには、やはり参加している本人が「ずっと通いたい」と思える場であることが大事だと、白井脳いきいき教室を取材して感じた。
次回は、認知症の改善のために学習療法を取り入れたデイサービスの現場の様子を紹介する。
