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一から学ぶ、認知症

「ぼけますから、よろしくお願いします。」 実娘が撮った認知症の母と耳の遠い父

認知症の母と耳の遠い父、実娘が撮った暮らしぶりが映画に

 伊藤左知子=ライター

 2016年に介護認定を受けて、最初はヘルパーさんが週1回、デイサービスが週1回というのから始まり、今は父と母が一緒に外科のリハビリに週2回行くほか、近所に住んでいる親戚が食事を持って様子を見に行ってくれるのが週1回という形で、ほぼ毎日人と接するようにしてもらっています。私も毎日電話をしているのですが、父は耳が遠いので、母が気付いて父に「電話よ、出て」と言って出る感じで、母の機嫌が悪いときは出てくれませんね。

認知症と診断されたのが2014年で、介護サービスを受けたのが2016年ですから、少し間があいていますね。

 実はテレビ番組になると決まったときに、「Mr.サンデー」は情報番組なので、地域包括支援センターのことも触れたいと思い、取材に行ったんです。それまで両親は介護認定を受けていなかったんですね。年も年ですし、母が認知症と診断された直後から、介護サービスを受けてほしいと何度も説得はしていたのですが、二人とも頑として聞いてくれなかったんですよ。

 それで取材ということで近所の地域包括支援センターに行って話したら、そこの職員さんが、「ちょっと心配だから一度伺わせてください」とおっしゃってくれて……。それで見に来てくれたのですが、そのシーンは映画にも入っていますが、その方が本当に上手に父と母を説得してくださいました。

 「何かあったら娘さんに連絡するといっても、東京から呉まで来るのに半日はかかるよ」とか「何かあったときに介護認定を受ければいいといっても、いざ何かあったときに申請しても、認定が下りるまでに1カ月はかかるので、今のうちに認定を受けるだけ受けておいたら?」とか。

 父も「それじゃ受けるだけ受けておこうか」となって……。番組がきっかけで介護サービスを受けることができてよかったです。こんなことなら親に内緒で、もっと早く地域包括支援センターに相談に行けばよかったと思いました。

(C)「ぼけますから、よろしくお願いします。」製作・配給委員会

介護サービスでヘルパーさんはどんなことをされるんですか?

 最初は母の家事援助でしたが、だんだん母が家事をできなくなってきましたので、母の身体介助になり、最終的には父の介護保険も加わって介護予防を入れています。父は、耳は遠いのですが年を取っているだけで介護認定は非該当なんです。それが父のプライドでもあるみたいですが、介護予防という形でヘルパーさんが入れるので、それで来ていただき、主に食事のサポートとして、1週間に1回、作り置きの食事を作ってくれています。

ちょっと引いてみると面白くも感じられる

お母様が認知症と診断されてどう感じましたか?

 母が認知症になる10年ほど前に、認知症の取材をしたことがあるのですが、そのときは、もし自分の家族が認知症になったら非常に大変なことだと悲観的に捉えていました。でも実際に家族が認知症になってみて、カメラを回しているせいかもしれないのですが、ちょっと引いた立場で見ていると、ちょっとボケたおばあさんと、耳の遠いおじいさんが、繰り広げる日常がかわいくも、面白くも感じられる。

 最初は、母が悲観的になるときもあるし、暴力的になるときもあるので、私もうろたえていました。母に「私はばかになったんかね?」と何度も泣いて言われたときは、一緒に泣いて翻弄されていたのですが、ただ母はそういう行動を取った後、疲れて寝てしまうんですよ。そして起きたときにはニュートラルに戻って、泣いている私を見て「何泣いてるの?」みたいな感じになる。これは振り回されるだけ損かなと思うようになりました(笑)。

 私は以前、乳がんになったことがあり、治療が終わった後に3カ月ごとに再発転移していないか検査をしたのですが、最初の3カ月は心配でびくびく過ごしていたんですね。それで検査に行ったら何でもなかった。そのとき思ったんです。「悩んでも悩まなくても同じ3カ月。万が一再発していてもそのとき考えればいいこと。それまでは笑って過ごしたほうが得」だって。なんだかあのときに人生観が変わったような気がします。

 だから母の認知症についても、「認知症になっても母が母であることに変わりはない。どうやって付き合っていくかが大事なのでは」と思っています。心掛けているのは、できるだけ母が暴力的にならないように先回りしてケアすること。例えば機嫌が悪くなりそうになったら、楽しい昔話をして笑わせたりとか、抱きしめたり、髪をなでたりしてスキンシップをはかるとか、そういったことをしています。認知症になったら誰にでも現れる記憶障害などのいわゆる中核症状は仕方がありませんが、周囲の人との関わりのなかで起きてくる暴言や暴力、徘徊(はいかい)といった周辺症状は、周りの人が気を使ってあげるだけで減らせますから。

プロができることはプロに任せていい

これまでの経験から親の介護に悩んでいる人に何かアドバイスはありますか?

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