日本経済新聞 関連サイト

ようこそ ゲスト様

日経 Gooday

ホーム  > 医療・予防  > 一から学ぶ、認知症  > 「明日は我が身」認知症も介護も人ごとではない  > 2ページ
印刷

一から学ぶ、認知症

「明日は我が身」認知症も介護も人ごとではない

『母さん、ごめん。』著者、松浦晋也さんインタビュー(後編)

 伊藤和弘=フリーランスライター

思い出すのもつらい「母に手を上げた日」

松浦さん 家族はお互いに甘えがあるわけです。イヤなことはイヤって言えちゃう。それが「介護は家庭内だけでは完結しない」と思う理由の一つです。第三者のヘルパーさんが入ることで、母はデイサービスにも行くようになった。人目を気にするというか、第三者が入ることで社会性を発揮するんじゃないかと思います。その場でどうふるまうべきか察知して、必要な行動を自ら行うようになるんですね。

排泄がコントロールできなくなると、いよいよ自宅での介護も限界という気がします。どこか施設に入れようとせず、ギリギリまで自宅で介護を続けたのはなぜでしょうか?

松浦さん 本人が家を出ることをいやがったからです。何回か話してみたことはあるけど、話を切り出すと強く抵抗するんです。「ああ、そんなにもこの家で暮らしたいのか。愛着があるのか。ならば、できる限りはやるしかない」と。今になってみると、もっと早くに(施設に入るのを)決断すればよかったと思いますけどね。

 というのも、いざ施設に預けようと思って申し込んでも空きがない。知らなかったのですが、半年から1年間待機させられることはいくらでもあるとのことでした。それで私も2017年の1月に預けることを決めた時点では、1年くらい待機する覚悟をしました。それが、まさか2週間で入れるとは思ってなかったし、本当に運がよかったと思う。

 ただ、もっと早くに準備を始めて、早く入れることになっても本人が「イヤだ、イヤだ」って大騒ぎになったでしょうから、どの段階で準備を始めるかは難しい問題ですね…。

介護を始めて2年が過ぎた2016年の夏、松浦さんは「死ねばいいのに」という独り言をつぶやくようになります。本心ではなかったと思いますが、今になって振り返るとどのような心理だったのでしょう?

松浦さん もちろん積極的に死を望んだわけじゃないけど、本心じゃないとはいい切れない。ストレスがたまって見境がなくなっているのが自分でも分かりました。母が死ねば、今の状況から逃れられるわけですから…。当時の正確な心理としては「死ねばいい」ではなくて、「いなくなればいいのに」ですね。

そして10月、とうとうお母さんに手を上げてしまいます。

松浦さん うん、それはちょっと、思い出すのもつらい話なので…。

 「優しさ」というのは精神的余裕なんですよ。余裕さえあれば、誰だって優しくなれる。介護する側のもともとの性格が良いとか悪いとかはあまり関係ない。1週間くらい前から「今度何かあったら殴ってやろう」という心の動きはあったんです。やっちゃった直後に、たまたま(ドイツ在住の)妹とスカイプの通話を予定したものだから、すぐに妹に話して、彼女経由でケアマネジャーに伝わったのがよかった。

 やっちゃった後は自分で抱え込まず、人に話すことが大事だと思います。相談する人が誰もいなかったら、そのまま暴力がエスカレートしていったかもしれない。そう思うとゾッとします。介護殺人も決して人ごとじゃない。自分は絶対にやらない、などとは思わないほうがいいです。誰でも追い詰められればありうることなんです。それを防ぐには第三者が介在するしかない。介護では、いかに第三者が重要かということだと痛感しています。

RELATED ARTICLES関連する記事

医療・予防カテゴリの記事

カテゴリ記事をもっと見る

FEATURES of THEMEテーマ別特集

  • 熱中症・かくれ脱水を防ぐ「水分補給」「マスク着用」のコツNEW

    脱水症やその一歩手前の「かくれ脱水」とはどういうもので、なぜ様々な病気につながるのか、脱水症はどんな人がなりやすく、どう予防すればいいのか。夏の今こそ知っておきたい、脱水症の怖さと対策について紹介する。さらに、夏期におけるマスク着用の注意点についても解説する。

  • かかると怖い!「膵炎」「膵がん」

    激痛に襲われる「急性膵炎」や、発見しにくく5年生存率が極めて低い「膵がん」など、膵臓の病気には厄介なものが多い。今回は、膵臓という臓器の役割や、膵臓の代表的な病気である「膵炎」「膵がん」の怖さ、早期発見のコツをまとめていく。

  • 60代以降で急増! 男を悩ませる前立腺の病気

    中高年にさしかかった男性にとって、病気が心配になる臓器の1つが「前立腺」だ。前立腺の病気のツートップ、前立腺肥大症と前立腺がんは、いずれも中高年になると急増する。前立腺肥大症は夜間頻尿などの尿トラブルの原因になり、前立腺がんは、進行が遅くおとなしいがんと思われているが、骨に転移しやすいという特徴があり、怖い一面もある。今回のテーマ別特集では、前立腺の病気の症状から、具体的な治療法までを紹介していこう。

テーマ別特集をもっと見る

スポーツ・エクササイズSPORTS

記事一覧をもっと見る

ダイエット・食生活DIETARY HABITS

記事一覧をもっと見る

からだケアBODY CARE

記事一覧をもっと見る

医療・予防MEDICAL CARE

記事一覧をもっと見る

「日経Goodayマイドクター会員(有料)」に会員登録すると...

  • 1オリジナルの鍵つき記事鍵つき記事がすべて読める!
  • 2医療専門家に電話相談できる!(24時間365日)
  • 3信頼できる名医の受診をサポート!※連続して180日以上ご利用の方限定

お知らせINFORMATION

日経Gooday新型コロナ特設

SNS

日経グッデイをフォローして、
最新情報をチェック!

RSS

人気記事ランキングRANKING

  • 現在
  • 週間
  • 月間

NIKKEICopyright © 2020 Nikkei Inc. All rights reserved.