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一から学ぶ、認知症

認知症の母を、50代独身男がガチンコで介護

『母さん、ごめん。』著者、松浦晋也さんインタビュー(前編)

 伊藤和弘=フリーランスライター

男は介護する母の下着を用意できるか?

やがてお母さんはあらゆる家事ができなくなって、すべて松浦さんが担当することになる。仕事をしている男性にとって、食事や掃除など「すべての家事」をこなすというのは想像以上に大変なことのように思います。

松浦さん いやもう、大変でした。私も一人暮らしの経験はあったので人並みに家事はできると思っていたのですが、自分一人の場合と「他の人が満足する」レベルは違うんですよね。自分一人なら、料理を失敗しても我慢して食っちゃえばすむでしょう。ところが、それを「まずい!」とはっきり言われてしまう。

 親孝行するなら、認知症になる前にしなければと、つくづく思いました。認知症になった親は、いくら熱心に介護しても感謝してくれなくなったりしますからね。それどころか、「ご飯がまずい!」と言われる。それで自分はやっぱり傷つくし、ストレスがたまっていく

 それでも介護を続けたのは、「自分がやらねばどうしようもないから」としかいいようがない。自分が食事を作るしかないわけです。認知症になると社会的抑制が外れるのか、遠慮がなくなるんですよ。たまに通院の途中などに外食に連れていっても、店内で食べている最中に「あー、おいしいものが食べたい!」なんて大声で言っちゃうわけです(笑)。

最近は「老人向けの食事宅配サービス」も増えています。松浦さんも試してみましたが、お母さんは満足されなかったんですね。

松浦さん 一食600円なりの味で、特に不満を持たない人もいると思います。ただ、老人向けの宅食(宅配の食事)はどうしても薄味なので、濃い味付けの北関東出身の母には物足りなく感じるようで…。私が作った料理も血圧が上がらないように薄味にすると、それにしょう油をかけてしまう。そこで減塩しょう油に替えると、もっと大量にかける(笑)。残りの人生とQOL(生活の質)を考えると、多少は味が濃くてもよかったのかなとも思いますけど…。

母にどんな下着を買ってくればいいのか、という苦労もありました。確かにこれは、息子には難しい。自分の母親がどんな下着をつけているか、きちんと知っている男性は少ないでしょう。

松浦さん そうですよね。普段どんな下着をつけているのか、それが季節によってどう変わるのか、そんなことまったく分からないでしょう。こっちに知識がないうえに、本人の言語能力も下がっているから、聞いてもよく分からない。最終的には、(ドイツ在住の)妹がいてくれたから何とかなったんです。


後編「『明日は我が身』認知症も介護も人ごとではない」に続く

(インタビュー写真:菊池くらげ)

松浦晋也(まつうらしんや)さん
科学ジャーナリスト、宇宙作家クラブ会員
松浦晋也(まつうらしんや)さん 1962年、東京都生まれ。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。日経BP社記者を経て独立。宇宙開発、コンピューター・通信、交通論などの分野で取材・執筆活動を行っている。著書に『はやぶさ2の真実 どうなる日本の宇宙探査』(講談社現代新書)、『のりもの進化論』(太田出版)など。2017年8月、『 母さん、ごめん。50代独身男の介護奮闘記』(日経BP社)を出版した。

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