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一から学ぶ、認知症

アルツハイマー、脳血管性…認知症の種類で異なる「食事トラブル」

料理を小分けに、逆にワンプレートに…と対策いろいろ

 伊藤左知子=医療ジャーナリスト

 しかし、本人は決して遊んでいるわけではなく、行動の組み立てを間違えた結果、そうした行動をしているだけだ。このような行動をしてしまう人には、食事を出す際に「今日のおにぎり、中身は鮭だよ。おいしそうだね、おにぎり」などと言って、「これは食べ物ですよ」「これから食べるのですよ」ということを認識してもらい、食べる行動が引き出せるようにうまく誘導できれば混乱を減らせるという。

 食事をただテーブルの上にぽんと置いただけでは、アルツハイマー型認知症の患者は「何かな?」「どうすればいいのかな?」と混乱してしまう。一度、違う方向の行動が始まってしまうと、食べるという行動に方向転換するのが難しくなるので、良いタイミングで最初に誘導することが大切だ。

【レビー小体型認知症の特徴】
 ~虫が入っているように見える、上手に食べられない

 レビー小体という特殊なたんぱく質が脳に蓄積することが原因で起こるレビー小体型認知症は、幻視や視空間認知障害、パーキンソン症状が起こるため、うまく食事が食べられなくなる傾向があるという。

「虫が入っているから食べたくない」。こういった幻視による食事トラブルは、レビー小体型認知症によく見られる(c)Katarzyna Bialasiewicz-123rf
「虫が入っているから食べたくない」。こういった幻視による食事トラブルは、レビー小体型認知症によく見られる(c)Katarzyna Bialasiewicz-123rf

 幻視とは、例えば実際には虫は入っていないのに、コショウの粒や黒ゴマなどが虫に見えてしまうといったことだ。「私たちだってレストランで食事に虫が入っていたらもう食べられないですよね。それと同じです」と枝広さん。「虫なんて入っていないから食べて」と伝えても、本人は虫がいると思っているから食べられない。それは至極正常な反応である。こういう場合は、いったん食事を下げて少し時間を空けてから、盛り付けを変えるなどして出すと食べてくれる可能性があるという。気持ちの切り替えが必要なのだ。

 視空間認知障害とは、目の前にあるものが、見えていてもそこにあると認識できない症状で、例えば、お皿の中の料理をスプーンですくおうとしても、お皿ではないところをすくってしまう状態になるなどだ。「こういうときは、さりげなくお皿の位置をスプーンですくえる位置にずらすなどしてお手伝いすると解決します」と枝広さん。

 パーキンソン症状は、手足が震えるなど、パーキンソン病に似た運動障害の一種のこと。スプーンでうまく食べ物がすくえなかったり、すくえても口に運べなかったりする。また顎や舌にも運動障害が出るため、食べ物を口に運べてもうまく飲み込めなかったり、よだれがこぼれたりしてしまう。「パーキンソン症状にはパーキンソン病と同じ抗パーキンソン病薬による薬物治療が有効です。またアルツハイマー型認知症に使われる薬がレビー小体型認知症にも使われるようになったので、抗パーキンソン病薬とアルツハイマー型認知症の薬の両方を併用して症状が抑えられている人もいます」と枝広さん。

 ただし、薬を使っても症状に波があるのがレビー小体型認知症の特徴でもあるという。また、覚醒障害といって、ボーっとしている状態としっかり起きている状態の波があるのもこの病気の特徴だ。他にもレビー小体型認知症の人は体がこわばってしまって、動きが止まってしまったり、かくかくした動きになってしまう症状が起こることもある。

 震えが起きたり、動作がぎこちなくなったり、あるいは意識がぼんやりしているときは、無理に食べさせずに時間を置くことが大切だ。

【前頭側頭型認知症の特徴】~食べたい、かき込みたい!

 前頭葉や側頭葉が萎縮して起こる前頭側頭型認知症の特徴は、抑制がきかなくなるため、社会的行動が難しくなったり、食行動に異常が起きたりすることだ。

 症状が進んでくると、スーパーでまだレジを通していないものを食べてしまったり、試食品を一人ですべて食べてしまったりすることもあるという。

 「最初に紹介した特定の食べ物へのこだわりや、スーパーの試食品を全部食べてしまうなども、前頭側頭型認知症の症状が原因です。それを指摘すると、ご本人から『分かっているのだけど、うまく抑えられない』と返答を頂くこともあります」と枝広さん。

 また、単語の理解ができなくなったり、物の正しい名称が分からなくなったりといった障害が起こり、さらに症状が進むと食べ物とそうでないものの認識ができなくなり、葉っぱを食べたり、洋服の袖をかんで飲み込んでしまうこともあるという。

 食行動の異常としては、過食、早食い、詰め込み食べといった症状が起こる。食事を前にすると、食べる行動の抑制がきかず早食いとなり、口の中に食べ物を詰め込んでしまう。さらによくかまないで飲み込もうとするため、窒息のリスクが高くなるといった危険性がある。症状が進むと手を使って口に詰め込むこともあるので、手がふやけて皮膚が炎症を起こしたり、感染症のリスクが高くなったりする。

 家庭で介護する場合は、目に付くところにある食べ物ではないものを食べようとしたら、ローコストでたくさん食べても問題ないものを代わりに置いておくといった対処をするといいと枝広さんは言う。

料理を小分けにすべき場合 vs 1皿にまとめるべき場合

 「認知症の患者さんの食事は、あれは駄目、これは駄目と禁止しても、良い結果にはならないので、それぞれの認知症の特徴を踏まえ、進行に合わせてこういう行動をするだろうと予測して、それに対してフォローすることが、介護する側にとっても楽になります」と枝広さんは話す。

 では日々の食事でどのように工夫したらいいのだろうか。

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