親が認知症と診断されたら、まず何をすべき?
あとで慌てないための介護準備のポイント
伊藤左知子=フリーライター
「最近、母の物忘れがひどくなり、病院へ行くと初期の認知症と診断されました。この先どうなるのか不安です」。40代のある女性がこう漏らすように、親が認知症と診断されたら、覚悟はしていても、大きな衝撃を受けるものである。しかし、落ち込んでいても、認知症は徐々に進んでいく。気持ちを切り替え、将来に向けて準備を進めることが大事だ。今回は親が認知症になった場合の介護の準備のポイントについて解説する。
【1】認知症を受け入れ、状況を把握する

認知症と診断を受けて一番辛いのは本人だが、家族にとっても衝撃は大きい。「認知症の親を介護するために会社を辞めるなど、自分の生活を犠牲にしなければならないのではないか」などと、不安は尽きない。
しかし、介護者自身の生活を犠牲にするほど負担が大きいと、介護は続かない。親が認知症と診断されたら、まずは落ち着いて、現状を把握することが大事である。そのうえで、数ある選択肢の中から、どのように生活していくのが介護する側とされる側にとっていいのかを、話し合って決めることが大切である。
整理してみると、認知症の診断が下った後の生活の選択肢は以下に示したようにたくさんある。親が独居の場合であれば、子としては心配も多いだろうが、住み慣れた家を離れたくない人もいるし、子どもと暮らすために引っ越して、生活環境が変わることで、認知症が急速に進行する場合もある。親がどのような生活を希望するのか、また、介護する側としてもどういった生活なら継続可能なのかを考慮して検討を進めることが重要だ。
いずれの場合も、あとで紹介する介護保険のサービスをうまく活用すれば、介護の負担は大きく軽減される。生活環境 | 介護の方法 |
1 独居 | 子どもの介護を受けず、一人での生活を続ける |
子どもが親の家に通って介護する | |
子どもが親の家に住んで介護する | |
2 配偶者と二人暮し | 配偶者が介護する |
配偶者が介護し、子どもが通って介護を支える | |
3 子どもと同居 | 子ども(世帯)が介護する |
4 施設に入居 | 施設職員が介護する |