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一から学ぶ、認知症

生活習慣病の予防・有酸素運動・知的活動… 認知症予防の5カ条

国立長寿医療研究センター長寿医療研修センター長・遠藤英俊さんに聞く

 伊藤左知子=ライター

有酸素運動と知的活動はなぜ大切?

スマートリィ・エイジングEXPOで講演した遠藤先生(写真:稲垣純也)
スマートリィ・エイジングEXPOで講演した遠藤先生(写真:稲垣純也)

 「高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病は、脳血管障害が原因となる血管性認知症を引き起こします。また糖尿病では2倍、高血圧では3倍、アルツハイマー型認知症の発症も高くなることが分かっています。よって生活習慣病を予防することは認知症の予防として重要です」と遠藤さん。

 生活習慣病を予防するためにも効果的なのが、ウオーキングやランニングなどの有酸素運動だ。認知症を発症していない高齢者4615人を5年間追跡した調査では、歩行以下の運動を週3回以下の頻度でしかしていない低運動量群は、歩行より強い運動を週3回以上の頻度で行う高運動量群に比べ、軽度認知障害、アルツハイマー型認知症、その他すべての認知症の発症リスクが有意に高かった(*2)。

 一方、認知症に対する知的活動の効果は前述の「ナンスタディー」の追跡調査で明らかである。脳にアルツハイマー型認知症の病変が起きていても認知症を発症しなかった人に共通していたのが、日記を書くなどの知的活動が高いことだった。

 「認知症予防のためには何歳になっても頭を使うことが大事です。特に定年退職後は注意が必要です。社会活動から引退して家に引きこもらない、新しい仕事や役割を見つける、自分より若い友人を作ったり、地域の役に立つボランティアなどに参加したりするなど、人と関わり頭を使うように心がけるようにしましょう」(遠藤さん)

 具体的には、語学を勉強したり、楽器を習ったり、あるいは囲碁・将棋などのゲームをする、カラオケなどで声を出すといったことがいいと遠藤さんは話す。

*2 Laurin D, et al.Arch Neurol. 2001;58(3):498-504.

有酸素運動と知的活動の組み合わせ「コグニサイズ」の勧め

 遠藤さんは、有酸素運動と知的活動を組み合わせた「コグニサイズ」という運動法が認知症予防に効果的だと勧める。

しりとりをしながらのウォーキングもコグニサイズといえる。写真はイメージ=(c) wang Tom-123RF
しりとりをしながらのウォーキングもコグニサイズといえる。写真はイメージ=(c) wang Tom-123RF

 コグニサイズは運動と認知トレーニングを組み合わせた新しい運動方法である。方法は簡単。例えば、足踏みやステップなどをしながら、同時に計算をする。計算は100から7ずつ引いていくなどでOK。ステップのリズムに合わせ、「100、93、86、79…」というように続ける。2人で交互に行うと、より複雑になり効果的だ(*3)。

 足踏みやステップだけでなく、ストレッチや簡単な筋トレ、ウオーキングなどの運動と組み合わせてもよい。組み合わせる認知トレーニングも、3の倍数で手をたたく数字遊びやしりとり、川柳を作るといったことでもかまわない。

 「コグニサイズで大切なのは、運動と認知トレーニングを同時に行うことです。そして、毎日、目標として決めた時間を続けることが大事です」と遠藤さんは言う。

*3 コグニサイズの詳細は国立長寿医療研究センター「認知症予防へ向けた運動コグニサイズ」で紹介

毎日続けられる認知症予防は食事

 「食事は、認知症予防で最も大切です」と遠藤さん。認知症予防の食事に関する研究報告は数多く、中でも九州大学の久山町における認知症の疫学調査(1985年に始まった65歳以上の全高齢住民を対象とした認知症および日常生活の調査で、現在も継続して行われている)は有名だ。

 認知症の予防につながる食事パターンがこの久山町研究から分かってきた。まず認知症予防のために食べるとよいとされる食品は、緑黄色野菜、大豆・大豆製品、牛乳・乳製品、海藻類などで、逆に減らすといいとされる食品は、米、酒だ。

 「ただし、米を単品で見ると、その摂取量と認知症発症との間に明らかな関連は認められず、一定の摂取カロリーの中で、米の摂取量を減らして、予防効果がある他の食品の量を増やす食事パターンがよいと考えられています」と遠藤さんは続けた。

 もう一つ、遠藤さんが認知症予防に効果的な食品として挙げたのが、柑橘類である。

 「1万3373人の日本人を対象にしたコホート研究(*4)で、柑橘類の摂取頻度が週2回以下の人に比べ週3~4回摂取している人では認知症発症のリスクが約8%低く、ほぼ毎日摂取している人では約14%低いことが分かりました(*5)」と遠藤さんは解説する。

 最後に遠藤さんは、ストレスについて、「慢性的なストレスをなくすことも認知症予防には大切です。例えば、定年退職後、家で奥さんにずっと怒られているような人は慢性的にストレスが多く、認知症になりやすいかもしれません。笑顔で夫婦仲良くが認知症の予防にも大切です」と、冗談交じりに話した。

*4 コホート研究:ある時点で研究対象とする病気にかかっていない人を集め、その後長期間観察し追跡を続けることで、ある要因の有無が、病気の発生や予防と関係しているかを調査する手法

*5 https://doi.org/10.1017/S000711451700109X
遠藤英俊(えんどう ひでとし)さん
国立長寿医療研究センター長寿医療研修センター長
遠藤英俊(えんどう ひでとし)さん 1982年滋賀医科大学卒業、87年名古屋大学大学院医学研究科修了。総合病院中津川市民病院内科部長、国立療養所中部病院(現・国立長寿医療研究センター)内科医長などを経て現在に至る。老年病専門医。著書は『最新 ボケない! “元気脳”のつくり方』(世界文化社)、『よくわかる認知症Q&A ―知っておきたい最新医療とやさしい介護のコツ―』(中央法規出版)など多数。認知症、高齢者虐待問題、介護保険関連を専門とする。

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