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一から学ぶ、認知症

侮れない! 認知症高齢者に多い「お口トラブル」

急に食べなくなったら、口の中に問題がある可能性も

 伊藤左知子=医療ジャーナリスト

 シリカゲルが口の中でそしゃくされて散らばりそのまま残ってしまうと、口の中の粘膜がただれる。「本人は相当痛かっただろうと思いますが、何が原因でそうなったのか本人にも分からないし、うまく伝えられないので、口を開けられなかったのだろうと思います」と枝広さん。

 こうした口の中の炎症は、薬でも起こるという。「特に便秘の薬など、唾液に溶けるとアルカリ性になる薬は、口の中に残ってしまうと潰瘍が起こりやすいので注意が必要です」と枝広さんは話す。「ただ、問題なのは単に潰瘍が起こることだけではない」と枝広さんは続ける。

 「口の中に炎症や潰瘍ができたことに気づかず、食事が取れないまま1週間も経過すると、栄養状態が悪くなって明らかに認知機能が低下してしまうのです。ただ、これは認知症が進んだわけではなく、見かけ上の低下ですが、反応も悪く、呼びかけても応答できなくなり、トイレなども含め今までできていた日常生活行為に失敗するようになってしまいます」と枝広さん。

 大切なのは、口の中に炎症や潰瘍が起きやすいということを把握すること。そして、普通の食事が食べられないなら、栄養補助ゼリーを試してみるなどの対応をすることだ。もちろん口の中のトラブルが疑われたら、歯科医師を頼ってほしい。

意外と気づかないあご関節の脱臼

高齢者はあごが外れやすく、認知症の人はたとえ外れてもそれを伝えられないことが少なくない(c)nebari-123rf
高齢者はあごが外れやすく、認知症の人はたとえ外れてもそれを伝えられないことが少なくない(c)nebari-123rf

 口の中のトラブルというより、口周りのトラブルだが、「高齢者はあごの関節も脱臼しやすくなるといえます」と枝広さん。膝や股関節などと同様に、あごの関節は、加齢とともにだんだんすり減る。そのため、あくびなど、大きな口を開けただけで外れてしまうという。

 また、繰り返しになるが、認知症の人は口の中にトラブルがあってもそれを伝えることが難しい。周囲も、「ああ、なんとなく口を開いているなあ」というくらいで、あごが外れていることに気づかないケースも少なくないのだという。

 あご関節の脱臼は、起きてすぐであれば元に戻せるが、気づかず放置すると、再び戻すことができなくなるという。「昨日外れたくらいなら大丈夫ですが、3カ月も放置すればもう入らなくなります。あごが外れたままの状態だと、開閉できずしゃべれないし、飲み込みの機能も低下するので、口から食べられなくなってしまいます」と枝広さんは話す。

 そうなると、もう手術するしか方法はないが、高齢者の場合、手術をするとそのまま寝たきりになってしまう可能性が高いため、家族も望まないケースが多いという。

 大切なのは、高齢者の場合、あご関節の脱臼が起こりやすいということを知っておくことである。そして、どうも口を開けたまま、ぼーっとしていると思ったら、まずスムーズにあごの開閉ができるかを確認し、難しいようならすぐに口腔外科など処置ができる医師のところを受診することである。

 次回は認知症の種類によって起こる食事のトラブルとその対処法について、引き続き、枝広さんの話を基に解説する。

枝広あや子(えだひろ あやこ)さん
東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と介護予防研究チーム研究員、歯学博士、歯科医師
枝広あや子(えだひろ あやこ)さん 2003年北海道大学歯学部卒業。東京歯科大学オーラルメディシン・口腔外科学講座、あぜりあ歯科診療所(豊島区口腔保健センター)勤務などを経て2015年より現職。研究テーマは「認知症高齢者の口腔環境および食事支援」。

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