ゴルフをすると認知症予防になるって本当?!
可能性が見えてきたゴルフと認知症予防の関係
伊藤左知子=医療ジャーナリスト
適度な運動が認知症予防にいいことは以前からいわれてきたが、さまざまな運動の中で、高齢者に人気の高いスポーツの一つ、ゴルフが認知症予防に効果があるかもしれない可能性が出てきた。これを証明するために、国立長寿医療研究センター、東京大学、杏林大学、ウィズ・エイジングゴルフ協議会が共同研究を行う。この研究の参加者募集説明会も兼ねたシンポジウムで、本研究の主任研究者である国立長寿医療研究センター予防老年学研究部・部長の島田裕之さんが講演を行った。その講演内容を基に、運動およびゴルフの認知症予防の可能性について紹介する。
適度な運動は認知症の予防効果がある!?
認知症の主な原因疾患であるアルツハイマー病や脳血管疾患を完治できる治療法はまだ分かっていない。しかし、「認知症を予防したり、進行を遅らせることは十分可能といえます。そのための戦略は2つ。認知症リスクを高める危険因子を避けること、予防につながる保護因子を増やすことです」と、国立長寿医療研究センター予防老年学研究部・部長の島田裕之さんは話す。
危険因子には避けられるものと避けられないものがあり、避けられるものとしては、生活習慣因子(高血圧、糖尿病、脂質異常など)、老年症候群因子(うつ傾向、転倒、不活動、対人交流の減少など)がある。
保護因子には、若い頃に高等教育を受けたかどうかなど年を取ってからでは変えようがないものもあるが、処方された薬をきちんと飲むなどの服薬管理、食事と運動(抗酸化作用の高い食事や適度な運動)、活動的なライフスタイル(活発な身体活動、認知活動の実施、社会参加、対人交流など)は、年を取ってからでも改善することが可能である。
いくつかの保護因子のうち、適度な運動は何歳から始めても効果が期待できると島田さんは言う。運動の直接的な効果として島田さんは、「これまでに、さまざまな研究で、運動は血圧を下げる、脂質代謝を促進させる、糖尿病の原因となるインスリン抵抗性を改善させるなどの効果が報告されています。また、運動は脳神経細胞数を増加させる、記憶に関わる脳の海馬を大きくする、血流をよくするなどの報告もあります。また、アルツハイマー病の原因と考えられているアミロイドβという物質の蓄積を抑える働きも報告されています」と話す。
また、高齢者では運動不足になると、筋肉が衰えて、転倒しやすくなる。転倒して骨折すると、寝たきりの原因となり、それが認知症を引き起こす引き金となる。さらに、高齢者になると何をするにもやる気が起きない、うつ傾向になりやすい。そういう症状にも運動は効果があるのだという。