認知症は遺伝する?
祖父母や両親が認知症だと、自分もなりやすいの?
伊藤左知子=医療ジャーナリスト
「祖父母や父母が認知症になったので、自分も認知症になるのではないか?」。そんな不安を抱えている人も少なくないのではないだろうか?そもそも認知症は遺伝するのか。認知症になる原因は何か。認知症の症状や治療法、患者への対応法など、知っておきたい基礎知識についてわかりやすく解説する本連載。今回は「認知症が起こるメカニズム」を探ってみよう。
認知症の一番の原因は「加齢」、95歳以上の発症率は約8割

親が認知症の人は、認知症になりやすいのか? そもそも認知症は遺伝するのか?
気になるところだが、川崎幸クリニック院長の杉山孝博さんによれば「遺伝が原因で認知症になる人はごく稀です」とのこと。若年性アルツハイマー病の一部に、原因遺伝子が分かっている家族性アルツハイマー病があるが、それは若年性アルツハイマー病の1割程度にすぎないという。つまり、「親が認知症になったから、家系に認知症の人が多いから、自分も…」という心配はあまりしなくてもいいのだそうだ。
では、認知症の原因は何だろうか。
認知症には複数のタイプがあり、原因と問われても一言では答えられない。ただ、「発症と最も関連が深いのは『加齢』です」と杉山さんは話す。
2013年5月に厚生労働省研究班が調べた調査によれば、日本における認知症高齢者は462万人、認知症予備軍は約400万人。その中で年齢別の発症率を見てみると、65~69歳で2.9%、70~74歳で4.1%、75~79歳で13.6%、80~84歳で21.8%、85~89歳で41.4%、90~94歳で61.0%,95歳以上で79.5%となる。80歳を過ぎると、ぐんと発症率が高くなっていることが分かるだろう。

つまり、年を取るにつれて、誰でも認知症になる可能性は高くなるということだ。それなら、手の打ちようはないということか。
「そんなことはありません。難しいのですが、認知症を予防したり、発症を遅らせることや症状を軽くすることは、ある程度可能です」と杉山さんは言う。