家族が認知症になったとき、やってはいけないNG行動
初期認知症で起こる問題とその解決法(1)
伊藤左知子=医療ジャーナリスト
両親や伴侶など身近な人が認知症になったとき、その事実を受け入れることができず、ついとってしまう行動や言動が、認知症の人を傷つけ、症状を悪化させてしまうことがある。どのような行動がNGなのだろうか。東京都健康長寿医療センター研究所 福祉と生活ケア研究チーム研究員の伊東美緒氏の話を基に解説する。
細かい指摘や小言は、逆効果
認知症の初期では、まだ認知機能が保たれているので、一人でも日常生活を行えることは、これまでにも何度か説明してきた通りだ(前回記事「介護保険が使えないことが多い初期認知症、ほかに頼れるものは?」参照)。しかし、何事も完璧にこなせるというわけにはいかない。

例えば、認知症になると、初期の段階から、燃えるごみの中にアルミ缶を入れてしまう、食器に洗剤が付いたまま、うっかり食器かごに上げてしまうといった些細な失敗が、増えてくる。問題は、そんなときの家族の対応だ。
失敗が何度か続くと、「ゴミはきちんと分別してよ」「ちゃんと洗剤を落とさないとだめでしょう」と、細かく指摘してしまいがち。家族としては、きちんとした生活に戻ってほしくて言うわけだが、この行為はむしろ逆効果になると伊東氏は話す。
「認知症の初期というのは、ご自身だけでなく、ご家族も認知症を認めたくない傾向があります。そのために、ご家族がしてしまう行動の中には、認知症の人を混乱させてしまうものがあります。失敗を細かく指摘する行為もその一つです。認知症のタイプにもよりますが、アルツハイマー型認知症の場合、実際にはできていなくても、自分ではちゃんとできているつもり、という場合が少なくありません」と伊東氏。
つまり、家族がよかれと思って言ったことでも、認知症の本人にとっては、「私が食器を洗ってあげているのに、なんで文句ばかり言うんだろう」と納得できない状態なのだ。これが続くと、「うるさい!」となって、口論につながってしまう。
「認知症の人は、言語機能も衰えてくるので、口論になっても、言葉数ではなかなか勝てません。そのため、イライラが募り、“もういい、出ていく”と飛び出してしまったり、あるいは“自分ではやっているはずなのに、私はおかしいのだろうか”と不安が募って、うつ状態に陥ってしまうこともあります」と伊東氏は話す。
やってはいけないNG行動(1)些細なことで小言を言う
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