認知症を疑ったときの医療機関、相談窓口の探し方は?
認知症の早期発見、早期治療のために知っておきたいこと
伊藤左知子=医療ジャーナリスト
物忘れが多くなった。今までできていたことがうまくできなくなった。そんなとき、頭に浮かぶのが認知症である。親やパートナー、あるいは自分自身が、もしかしたら認知症かもしれないと感じたときに、私たちはどうすればいいのだろうか。東京都健康長寿医療センター研究所部長の粟田主一さんに話を聞いた。
認知症を疑ったとき、どこへアクセスすればいい?

もしかしたら私が、あるいは親が認知症かもしれない。そう感じたとき、すぐに医療機関を受診して、医師の診断を受けることができるだろうか。
「近年、医学の進歩で認知症は早期診断ができる時代になりました。しかしながら、認知症の人が適切に診断にアクセスできているかというと、まだ十分とはいえません」と東京都健康長寿医療センター研究所の自立促進と介護予防研究チーム研究部長・粟田主一さんは話す。
初期の認知症の人が、診断までのアクセスに至らない原因のひとつに、窓口の分かりにくさがある。例えば、「まだ軽い物忘れなので、大きな病院に行くのは気が引ける。しばらくは病院に行かず様子を見よう」という人の中には、「そうはいっても、将来が不安。生活にも多少の不便を感じるようになったので、誰かに相談したい」と思う人もいるはずだ。そういうときに、どこに相談しに行けばいいのかの判断が難しいのである。
精神科や物忘れ外来など、認知症の専門医療機関に行くことに抵抗を感じる人も多い。それ以前に、「どの科に行ったらいいのか、全く分からない」という人も少なくないだろう。
粟田さんは、「普段、風邪などを診てもらっているかかりつけ医がいる人は、まずはかかりつけ医に相談してみるといいでしょう」と話す。医師であれば、専門医のいる病院も紹介してくれる。かかりつけ医に紹介してもらった専門医を受診するのであれば、行きにくさのハードルはかなり低くなる。
しかし、かかりつけ医を持っていない場合はどうすればいいのだろうか。
ひとつの選択肢として、認知症診療の知識や技術などを習得する研修(認知症サポート医養成研修、かかりつけ医認知症対応力研修)を修了した医師を、今後のかかりつけ医に選んで受診してみるという方法がある。
「現在、国では認知症対策に力を入れていて、これまでは病院にだけ設置されていた認知症疾患医療センター(※1)を診療所でもできるように制度化して、2018年までに全国に500カ所作ろうと取り組んでいるところです(全国の認知症疾患医療センターの一覧はこちら)。また、認知症サポート医は現在3000人以上いて、認知症診療を行うとともに、地域連携の推進役を担っています。将来的には5000人を目標数としています」と粟田さんは話す。
認知症サポート医など、認知症に詳しいかかりつけ医は、住んでいる市区町村の役所に行くか、電話をして聞けば教えてもらえる。また市区町村のホームページで検索できる場合もあるので、チェックしてみるといいだろう(例えば東京都の「かかりつけ医・認知症サポート医」名簿はこちら)。認知症専門医療機関についても同様に、市区町村の相談窓口を利用するといい。
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