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一から学ぶ、認知症

押しつけ、上から目線…母の認知症で気がついた「不幸せな介護」

ドキュメンタリー映画『毎日がアルツハイマー』監督インタビュー(2)

 伊藤左知子=医療ジャーナリスト

関口 ハマートンコート認知症ケア・アカデミーは、認知症ER(緊急救命室)として機能している施設で、ここの入所者は、主に認知症の最終ステージにいる人たちですが、ついのすみかではありません。彼らは「パーソン・センタード・ケア」によるケア・マッピングを作成するために仮入所しています。

 ケア・マッピングとは、この人には、こういうケアが必要ですよ、こういうときにはこういうふうに対応するといいですよ、というようなことを見つけ出す作業ですね。例えば、私が認知症ケア・アカデミーのワークショップに参加したときの例です。元陸軍大将で大変気難しく、特に女性スタッフに対して暴言を吐く男性がいました。スタッフは、すぐにその男性が軍隊では部下から「イエス・サー」と言われて過ごしてきたことを理解します。そして、彼を世話する人は若い男性だけにして、「イエス・サー」と部下役をするなどの配慮をしたら、それまであった暴言などの周辺症状が全く出なくなったというのです。

 ハマートンコート認知症ケア・アカデミー施設長で認知症専門精神科医であるヒューゴ・デ・ウァール博士は、「認知症という病気だけが同じで、あとは十人十色」だと言い切っています。それぞれに合ったケア・マッピングをつくることが重要というわけです。

ハマートンコート認知症ケア・アカデミーのスタッフと(©2017 NY GALS FILMS)

母の死を意識するようになって……

現在、『毎日がアルツハイマー ザ・ファイナル』の製作をしているそうですが、どのような映画になる予定ですか?

関口 『毎日がアルツハイマー2』の製作が終わって、さらに認知症ケアを突き詰めていこうかなと考えていた矢先、2014年の夏から2015年の冬にかけて、母が脳の虚血症の発作で4回も倒れ、意識不明になり救急搬送されたんです。このことをきっかけに「看取り(みとり)」について考えるようになりました。それで、認知症の母の人生の最終章にどう向き合えばよいかということが、おのずとテーマになり、また、介護者である私が母の命を預かる責任の重さを痛感するようになりました。

 本人は認知症のおかげで死の恐怖がなくなるかもしれませんが、介護をしている私が、最終的には母が死ぬことをどう引き受ければいいのか。ハッピーエンディングな死は可能なのか。介護をしてきた人たちから、最後にうまく死なせてあげられなかったという話をよく聞きます。

 例えば私の友人は、医者に勧められるまま、認知症の父親に胃ろうを造設したのですが、不快感がずっと続いていたようで、見ていてかわいそうだったと言っていました。最期は大きな脳梗塞を起こして亡くなったのですが、家族間で「胃ろう」への考え方の違いもあり、後にしこりが残ったようです。認知症の人の看取りの難しさは、医療的決断全てを家族が引き受けることにあると思います。医師の勧めで家族が良かれと思って決断をしても、本人にはそうでないことがある。家族間の意思統一も難しい中で、看取りの後に「果たして、これでよかったのだろうか」と自責の念にさいなまれる方も多くいらっしゃるようです。

 ファイナルは、認知症と看取りと死という普遍的なテーマについて掘り下げています。重いテーマですが、「毎アル」シリーズ特有の笑いとユーモアの精神満載の作品になる予定なので、楽しみにしていてください。

最新作『毎日がアルツハイマー ザ・ファイナル』は、現在、海外を含む撮影を終え、編集・仕上げの大詰めを迎えているとのこと。本作はクラウドファンディングによる完成応援プロジェクトで、映画の完成に向けて支援を呼びかけている(©2017 NY GALS FILMS)
関口祐加(せきぐち ゆか )さん
映画監督
関口祐加(せきぐち ゆか )さん 1957 年横浜市生まれ。1981年日本の大学を卒業後、オーストラリアに渡り、1989 年『戦場の女たち』で監督デビュー、2007 年に『THE ダイエット!』発表。2009年9月より認知症の疑いがあった母親の撮影を始め、YouTube に投稿開始。2010年1月、介護のため29年ぶりに帰国、動画をまとめた映画『毎日がアルツハイマー』を2012年7月に公開。現在、認知症の母の看とりをテーマに『毎日がアルツハイマー ザ・ファイナル』を製作中で、2017年5月31日まで資金調達のためクラウドファンディングを実施している。

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