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一から学ぶ、認知症

押しつけ、上から目線…母の認知症で気がついた「不幸せな介護」

ドキュメンタリー映画『毎日がアルツハイマー』監督インタビュー(2)

 伊藤左知子=医療ジャーナリスト

 認知症の母との日常を記録したドキュメンタリー映画『毎日がアルツハイマー』(2012年製作)のヒットに続き、続編『毎日がアルツハイマー2 関口監督、イギリスへ行く編』を2014年に公開した映画監督の関口祐加さんは、次回作『毎日がアルツハイマー ザ・ファイナル』の上映に向けて活動している。前回記事「『毎日がアルツハイマー』主演は母、映画監督の娘はどう見た」に続き、関口さんが考える理想的な認知症ケアについて話を伺った。

「パーソン・センタード・ケア(認知症の本人を尊重するケア)」を知った関口監督(右)は、イギリスに飛び、ハマートンコート認知症ケア・アカデミーのヒューゴ・デ・ウァール博士(左)らに取材をした。関口監督がイギリスで学んだ、認知症ケアで大切なこととは?(©2017 NY GALS FILMS)
「パーソン・センタード・ケア(認知症の本人を尊重するケア)」を知った関口監督(右)は、イギリスに飛び、ハマートンコート認知症ケア・アカデミーのヒューゴ・デ・ウァール博士(左)らに取材をした。関口監督がイギリスで学んだ、認知症ケアで大切なこととは?(©2017 NY GALS FILMS)

3年半お風呂に入らなかった母、そのときどうしたか

『毎日がアルツハイマー』を製作していく中で、関口監督が気づいた良い介護、悪い介護とは何か教えてください。

関口 大切なのは本人の気持ちを尊重することだと思います。物忘れが進んで今までできたことができなくなっている人に、「どうしてこんなこともできないの?」と言っても、できないものはできないですよね。でも、多くの人が、親はこうあるべきだ、といった「私」の価値観を押し付け、できなくなったことを受け入れるのが難しい。そういうのを私は「一人称介護」と呼んでいるのですが、これではみんなが不幸になってしまいます。

 嫌がる親に脳トレを強要したり、「お母さんのためにしているのに、なぜ言うことを聞いてくれないの」と怒るなど、自分の価値観に当てはまらない相手の行動に対してイライラするのは自分の健康によくないと思います。一歩引いて、介護をする相手は今何を必要としているんだろうかと考える「三人称介護」の考え方が重要です。そしてやるべきことが分かったら、今度は相手がその気になるよう「演出」を心がける。介護は、創意工夫の連続です。私は四六時中、演出のアイデアを考えていますよ。

 私の母の場合、結局、3年半もお風呂に入れなかったのですが、そこには母なりの理由があるんだと考えました。無理やりお風呂に入れても根本的な問題は解決しません。まず母の気持ちを想像してみました。母はシャイで、温泉に行っても大浴場ではなく内風呂に入るような人です。娘の私でも一緒に入浴した記憶はありません。そんな母の入浴をかなえるにはどうすればいいのか。じつは母は若い頃、看護師になりたかったのですが、母の父親に反対されて、その夢を諦めてしまった。以前、そんな話をしてくれたので「母をお風呂に入れることができるのは看護師さんしかいない」と思いつきました。それで訪問看護を頼むことにした。これが私の言う演出です。

様々な演出をするうちに、母・宏子さん(右から2番目)に少しずつ変化が表れ、デイサービスに通えるようになったり、一緒に外出できるようにもなった(©2017 NY GALS FILMS)
様々な演出をするうちに、母・宏子さん(右から2番目)に少しずつ変化が表れ、デイサービスに通えるようになったり、一緒に外出できるようにもなった(©2017 NY GALS FILMS)

ただ、訪問看護を頼もうとすると、新たな問題が出てきたのですよね。

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