最新研究で明らかに! 認知症に効果的な予防策3つ
長寿研・鳥羽理事長に聞く!認知症予防の最前線
認知症の最大のリスクは言うまでもなく加齢。誰でも年を取れば、認知症になる可能性は高くなる。しかし、90歳になっても認知機能がほとんど衰えない人がいるのも事実だ。認知症は予防できるのではないかと、これまで世界中でさまざまな研究が行われてきた。現在分かっている危険因子は何か、効果的な予防策は何か、認知症予防の最新事情について、前回に引き続き国立長寿医療研究センター理事長・総長の鳥羽研二さんに聞いた。

認知症の危険因子や、予防策については、これまでにさまざまな研究が行われ、報告されてきたが、2015年3月にスイス・ジュネーブで開催されたWHO主催の認知症会合の際、1990年1月から2012年10月までに公開された認知障害に関する247の研究報告を解析した結果が報告された(*)。
その報告によれば、認知症の危険因子とされているものの中にはかなり強い危険因子と考えられるものもあれば、現時点では認知症との関連が薄いと考えられるものもあることが分かったという。
教育、運動、喫煙、カフェイン、抗酸化物質、n-3脂肪酸(オメガ3系脂肪酸)など、認知症との関連が取り上げられてきた因子は、実際のところ、予防効果があるのか、本当に危険因子なのか。上記の研究報告書では、低い教育水準、運動不足はアルツハイマー病の強いリスク因子であると結論づけられた。同報告をベースに、鳥羽さんの解説も交え、主要な因子の現時点での評価を紹介する。
【教育】知的活動は、認知機能低下のスピードを遅らせる
知的活動が認知症予防や改善にいいということは、これまでにも言われてきたが、多くの研究報告から、若い頃の教育水準が高い人ほど、晩年の認知機能の低下は少ないことが示唆された。逆に、若い頃、教育を受ける期間が短かった人は、晩年になって認知症のリスクが高くなることが分かった。「文字が読めないと、知的刺激が頭に入ってきづらい。そういったことが認知機能の維持に関係していると思われます」(鳥羽さん)。
だたし、年を取ってからの知的活動も、認知機能が低下するスピードを遅らせるという報告もあった。鳥羽さんは、「知的活動は若いうちから行うのがいいのですが、年を取ってからでも、十分に有効です。ですから、もう遅いとあきらめないようにしてください」と話す。
また「大人になってからの知的活動で一番いいのは仕事」と鳥羽さん。「特に、手馴れた仕事よりも、新しい仕事を行うほうが、脳に刺激を与え知的活動としての効果も高くなります」とアドバイスする。
「逆に、一番よくないのは仕事をリタイアして、急に知的活動がなくなること」。定年退職後、1日中家でぼーっと過ごして、気が付いたら認知症!などということにならないように、「リタイアする前から“趣味の貯金”をしておくことが大切です」と鳥羽さんは話す。
「リタイア後も趣味があれば、それを通じて人とのつながりができます。社交性も知的活動のひとつ。おしゃべりをしながら囲碁や将棋などのテーブルゲームをするのもいいでしょう。ちなみに、どのような趣味が認知機能の低下を抑えるかというニューヨークの研究では、1番がダンス、2番がテーブルゲームでした。ダンスの場合、パートナーがいるので、社交性があることも脳によいと考えられます」(鳥羽さん)。