日本経済新聞 関連サイト

ようこそ ゲスト様

日経 Gooday

ホーム  > 医療・予防  > 一から学ぶ、認知症  > 高齢者の認知症リスク、地域活動での「役職」でさらに低下  > 2ページ
印刷

一から学ぶ、認知症

高齢者の認知症リスク、地域活動での「役職」でさらに低下

 金沢明=ライター

 組織参加について言えば、前期高齢者で3003人(32.5%)が「不参加者」、2514人(27.2%)が「一般参加者」、2784人(30.1%)が「役職参加者」であった。一方、後期高齢者では、1774人(38.4%)が「不参加者」、1289人(27.9%)が「一般参加者」、832人(18.0%)が「役職参加者」であった(*1)。

「一般参加者」より低い「役職参加者」の認知症リスク

 高齢者のうち10年間に認知症を発症した人は、2003年時点の前期高齢者で708人(7.7%)、後期高齢者で1289人(27.9%)であった。認知症の判定の仕方は、「認知症高齢者の日常生活自立度」(*2)で、レベル2以上と判定された人を「認知症発症」とした。性、年齢、教育年数、婚姻状況、居住形態、就業状況、歩行時間、既往歴(心疾患、脳卒中、高血圧、糖尿病)、飲酒、喫煙、抑うつ、IADL(手段的日常生活動作(*3))などを調整して解析した結果が、図1となる。

出典:Nemoto,et al. BMC Geriatrics. 2017;17:297
[画像のクリックで拡大表示]

 図1は、前期高齢者の場合だが、一般参加者と比較して、地域活動不参加者の認知症発症リスクは22%増え、逆に役職参加者の認知症リスクは19%減ることが分かった。

 根本さんは、「これまで高齢者が様々な地域活動に参加することが、認知症発症リスクの抑制につながるということは分かっていたが、今回の調査研究で、単に参加するだけでなく、組織の世話役などの『役職』を担ってより積極的に参加することが、さらに認知症リスクを下げることが分かった」と解説する。

 では、役職を担って地域活動に参加することが、なぜ認知症リスクの更なる軽減につながるのだろうか? 根本さんによれば、「リーダー的役割をするとなると、活動の日数も多くなり、メンバー間の調整など多様な仕事を主体的に行わなければならない。つまり量的にも質的にも活動への参加頻度が増え、その結果、認知機能の低下防止につながるのではないか」という。

男女による違いはある?

 では、どんな団体・会に参加して役職について活動をするのが、認知症の予防のためによいのか? 今回の調査研究では、組織の種類による認知症リスクの差については検討していない。ただ、以前根本さんたちが山梨県都留市で行った研究(*4)では、活動内容の種類別に、認知機能低下との関係を調べている。

 その結果によると、男性の場合は、町内会・自治体、老人クラブ、消防団などの「地域組織活動」と、政治団体の会、業界団体・同業団体、住民運動、消費者運動などの「政治経済活動」が、認知機能低下を防ぐ効果が大きいことが分かった。一方、女性の場合は、ボランティア活動への参加が認知活動の低下を防ぐ可能性が高いことが分かっている。

 今回の研究では、調査開始時点で75歳以上の後期高齢者については、地域活動への参加や役職を持つことと認知症リスクの間には、関連性が見られなかった。根本さんは、「解釈は難しいが、多くの先行研究で抑うつやIADLの低下と認知機能の低下の関連が認められている」と話す。

 後期高齢者では、地域活動への参加よりも健康状態のほうが強く関連していた。「今回の調査では、調査開始時点での地域活動の参加や役職の有無について調べ、認知症発症との関連を検討したが、過去の経験については考慮していないため、関連が認められなかったと考えられる。これまでの研究で、地域活動をしていると良好な健康状態が維持されることが分かっているため、若いうちから地域活動に積極的に関わることで、結果的に認知症を予防することができるのではないか」と根本さんは話す。

 ともあれ、高齢者が、自分に合った地域の活動に参加し、運営側としての「役職」を担ってアクティブに活動することが、ひいては認知症予防につながることを、根本さんたちの研究は数多くのデータから科学的に証明している。

*1 足しても100%にならないのは、「行方不明」の人がいるため
*2 介護保険の要介護度判定でポイントとなる基準で、認知症の人に必要な介護の度合い、大変さを分類したもの
*3 「instrumental activities of daily living」の略で、人が日常生活を送る上で必要な動作の中でも、複雑で高次的な動作のこと。例えば、買い物、洗濯、金銭管理、服薬管理、電話応対、交通機関の利用など。よくに似た言葉に「ADL(activities of daily living)」があるが、こちらは摂食、排せつ、移動などより基本的な動作を指す。
*4 根本裕太ほか.地域高齢者における認知機能低下の関連要因:横断研究. 日本老年医学会雑誌.2017
根本裕太(ねもと ゆうた)さん
早稲田大学スポーツ科学研究科博士課程、東京都健康長寿医療センター研究所非常勤職員
根本裕太(ねもと ゆうた)さん 研究所非常勤職員。早稲田大学大学院修士課程(スポーツ科学)修了後、エーザイを経て現所属。高齢者の社会参加と身体活動量促進を目的とした調査研究ならびに地域介入研究に従事している。

先頭へ

前へ

2/2 page

RELATED ARTICLES関連する記事

医療・予防カテゴリの記事

カテゴリ記事をもっと見る

FEATURES of THEMEテーマ別特集

  • 青魚のDHAやEPAで、血管を若返らせて、メタボも抑制!

    サバ、イワシなどの「青魚」の健康効果が注目されている。青魚にたっぷり含まれるDHAやEPAは、血管を若返らせ、メタボを抑制したり、認知症のリスクを下げる効果も期待できる。手軽に食べられる「サバ缶」や「イワシ缶」も人気で、カルシウムもしっかりとれるため、骨粗鬆症の予防にもなる。

  • 老化を左右する血管! 若返りのポイントは?

    体の中に縦横無尽に張り巡らされた「血管」をよい状態に保つことは、健康を維持するため、そして老化を防ぐために極めて重要だ。では、強い血管をキープし、老化した血管を若返らせるには、何をすればいいのだろうか。本特集では、2万例を超える心臓・血管手術を手がけてきたスペシャリストに、血管の若さを維持する秘訣と、血管を強くする運動法・食事法を聞いていく。

  • つらい「肩こり」は動的ストレッチで解消!

    肩こりの原因の大半は、生活習慣。すなわち、不自然な姿勢で過ごすことや、たとえ良い姿勢であっても長時間続けてしまうことが、首や背中の筋肉を緊張させ、筋疲労を引き起こす。この記事では、肩こりに関する記事の中から重要ポイントをピックアップして、肩こりの解消方法をコンパクトに紹介していく。

テーマ別特集をもっと見る

スポーツ・エクササイズSPORTS

記事一覧をもっと見る

ダイエット・食生活DIETARY HABITS

記事一覧をもっと見る

からだケアBODY CARE

記事一覧をもっと見る

医療・予防MEDICAL CARE

記事一覧をもっと見る

「日経Goodayマイドクター会員(有料)」に会員登録すると...

  • 1オリジナルの鍵つき記事鍵つき記事がすべて読める!
  • 2医療専門家に電話相談できる!(24時間365日)
  • 3信頼できる名医の受診をサポート!※連続して180日以上ご利用の方限定

お知らせINFORMATION

SNS

日経グッデイをフォローして、
最新情報をチェック!

RSS

人気記事ランキングRANKING

  • 現在
  • 週間
  • 月間

NIKKEICopyright © 2019 Nikkei Inc. All rights reserved.