日経グッデイ

私の「カラダ資本論」

人生100年時代に重要なのは「姿勢年齢」【ジャパンネット銀行 田鎖社長】

第3回 社員300人と対話でやりがい育む

 田鎖智人=ジャパンネット銀行

様々な分野で活躍する一流人が実践する健康マネジメント術を紹介する本コラム。今月は日本初のネット専業銀行として創業した、ジャパンネット銀行の田鎖智人社長にお話を伺ってきた。最終回は、同社の働き方改革の一環として実施されている「対話の会」を紹介する。

 2018年2月にジャパンネット銀行の社長に就任して以来、働き方改革の一環として社内環境の向上に努めています。例えば、執務室内に打合せスペースを多く作り、気軽なミーティングができるようにしました。これまでは会議室を前もって予約してミーティングすることが多かったので、予約なく使える打合せスペースが多くなり、社内のコミュニケーションが増えているように思います。

 また、銀行の社長と聞くと、社長室で執務をしているイメージがあるかもしれませんが、当社に社長室はありません。就任にあたって専用スペースを作る話も出ていましたが、オープンな雰囲気を大切にしたかったので、社員が仕事をしているフロアの一角にデスクを置いてもらいました。

 私のデスクの前にも打ち合わせスペースも設置。パーテーションなどもなく、互いの働く様子やミーティングの様子もよく見えます。普段はシャツやポロシャツなどラフな格好で仕事をしていて、来客の前には着替えるようにしています。ただ着替えで隠れる場所もないので、ワンタッチ式の簡易テントを購入して、そこで着替えをしています(笑)。

 また、社長就任直後から実践しているのが、全社員との「対話の会」です。私は仕事をする上では、体の健康はもちろんですが、心の健康も重要だと考えています。体が車のエンジンだとしたら、心はガソリンのようなもので、気力が満ちていなければ、仕事でもパフォーマンスを発揮することはできないと思うのです。特に、自分は何のために働いているのかが腹落ちしていて、自分の仕事が人や社会のために貢献できていると感じられている時は、やりがいを持って楽しく働けますし、多忙な時期でも疲労感が違ってきます。対話の会は、そうした内発的なエネルギーを高めるサポートを目的に始めました。

 まず、十数名程度のグループごとに集まってもらい、1カ月ほどで全社員約300人との対話を実施。その中で、働く意義や目標、会社が進むべき方向性などを話し合い、会の終了後にはアンケートも行いました。その後も継続して3回実施してきたところです。

 インターネットを取り巻く環境が急速に変化し、業界内での競争も激化している中で、ユーザーが求めているサービスは何か、その実現にはどんなことが必要か、そこにどのようなやりがいを見出せるかといったことを、互いに共有することができるようになってきています。

社長からの質問は「恐怖」

 対話やアンケートで挙がった課題や指摘は次の会で応えたり、改善したりしています。例えば、対話の中で私が質問することもあったのですが、「質問タイムが恐怖です」という声があり、次の会からはやめました。確かに、質問しようとして目を合わせると、急にメモを取り出す人も結構いたんですよね。質問をやめてみると、ちゃんと目が合って、前のめりの姿勢で聞いてくれるようになって、プレッシャーになっていたんだなということが分かりました(笑)。

 逆に、遠慮があって私に質問ができていない人もいるかもしれないと思い、希望者を募って、質問に答える会も実施してみたところ、思っていた以上に多くの人が参加してくれました。そうして対話を重ねていく中で、社員の姿勢も能動的になってきているのを感じています。今後も「もう十分だからやめてほしい」という声が出るまで、続けていきたいと思っています。

 人生100年時代といわれる今、定年退職に対する考え方が議論されていますよね。60歳を65歳まで引き上げたり、それ以上の年齢も検討されたり。ただ、私は戸籍上の年齢で区切ることには違和感があって、大切なのは「姿勢年齢」だと思っています。

 姿勢年齢とは、肉体的に健康な姿勢という意味もありますが、物事に対する姿勢ですね。前向きで、新しいことに挑戦する姿勢や、やりがいを持って働くためにインプットを怠らない姿勢などに、年齢は関係ありません。20代でも目標や覇気のない人もいれば、60代でも生き生きとして、積極的にチャレンジを続けている人もいます。私はこの姿勢年齢が若い人を雇用すべきだと考えていて、社員が心身ともに健康で、楽しくやりがいを持って働ける、若々しい姿勢年齢を維持していけるように、サポートを続けていきたいと思っています。もちろん、私自身もそうあるように努力していきますよ。

(まとめ:田村知子=フリーランスエディター/写真:村田わかな)

田鎖智人(たくさり ともひと)さん
ジャパンネット銀行社長
田鎖智人(たくさり ともひと)さん 1972年生まれ。95年早稲田大学政治経済学部卒業後、日本信販(現三菱UFJニコス)を経て、2003年ヤフー入社。2006年ジャパンネット銀行との資本業務提携に伴い、同行社外取締役に就任。ヤフー セントラルサービスカンパニー 決済金融本部本部長などを経て、2018年2月から現職。