非日常的な行動も心身の健康のために大切【キッコーマン 堀切社長】
第2回 週2回のジム通いは体力維持と気分転換のため
堀切功章=キッコーマン
大学進学と同時に競技スキーへ
当時はスーパー大回転がまだなくて、滑降(ダウンヒル)と大回転(ジャイアントスラローム)と回転(スラローム)の3種目でした。私が得意だったのは、大回転ですね。まぁ、本当は3種目バランス良くできるほうがいいのですけれど。日本の選手は、世界で戦うには体格に恵まれていないから、滑降と大回転はあまり向いていないんです。日本選手は細かいターンを繰り返す回転が得意で、日本人では猪谷千春さんが冬季オリンピック初の、そしてスキーアルペン競技で唯一のメダリストです(1956年コルチナ・ダンペッツオ大会)。
私の場合、細かい動きが得意ではなく、回転が苦手だったんです。滑降は日本では練習できる場所が少ないですし、あのスピード感で滑るにはかなりの勇気が必要です。体格が大きくないとスピードに乗れないので、海外の選手にはなかなか勝てないですね。
大学時代の冬は、ほとんど山にこもりっきりという時もありました。特に1年から2年にあがる冬は12月から合宿に行って、途中で試験のために帰ってきて、また3月いっぱい滑っていました。4月から5月の連休は谷川岳で、6月は山形の月山合宿というのがあって、7月は乗鞍岳…、いつ学校に行っているんだという状態でしたね(笑)。

会社に入ってからは、昔のクラブの合宿に参加したりもしていました。まあ、僕らの時もそうでしたけど、OBが先輩面して参加すると嫌がられるんですけどね(笑)。それから社長になるまでは、社内で仲間を募って毎年行っていました。ただ、社長になってからはリスクを考えて行くのを控えています。やっぱり競技スキーの滑りが身に付いているものですから、トレーニングをせず体力がないと危ないんです。スピードがコントロールできなくなりますから。
その状態で滑ってけがをして、仕事に穴を開けるわけにはいきません。最初は少し寂しい思いもしましたが、一度辞めて、もう7シーズンも滑っていないと、今度は行くのが面倒くさくなってしまうんですね(笑)。できないこともないとは思いますが、これから再開しようとすると、道具もまた一からそろえなければいけません、進化していますからね。それが面倒なんです(笑)。
運動同様に芸術鑑賞も健全な心身の糧になる
それで今は週に2回のトレーニングジムです。昔はシーズン前にトレーニングをして、スキーに臨むという形だったのですが、行かなくなったことで体力維持をしなくてはいけないと考えたんです。それまでも、あっちこっちのジムに不定期に行ってみたりしていましたが、定期的に通うようになったのは、スキーをやめてからです。

先ほど週に2回と言いましたが、むしろ今は回数が増えています。前回も言いましたが、コロナ禍で夜の会食がなくなったので、会社が終わってからジムに行ける時間ができたからです。私が通っているジムは、スタジオにプール、ウエートトレーニング機器がそろった総合的な場所なんです。ですから、「今日はプールメインに」、「この日はウエートに重きを置いて」と、メリハリを付けて、バランス良くトレーニングすることを心がけています。
体を動かして汗をかくのは気持ちが良いですし、気分転換になります。そのほかにも、運動ができない時は、美術館に行って絵画などを鑑賞したり、オーケストラのコンサートを聴きに行ったりします。こういった行動は自分の教養にもなりますし、心の栄養になっていると思います。普段とは違う、非日常の世界に心身を置くことも、健康的な生活を送るうえで大切なことなんです。
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次回はご自身の食に対する考え方と、企業として提供する健康的な商品への思いについて伺います。
(まとめ:松尾直俊=フィットネスライター/写真:村田わかな)
キッコーマン代表取締役社長CEO
