日経グッデイ

私の「カラダ資本論」

「自分の心を知る」ことが健康の第一歩【グロービス堀義人氏】

最終回 ほのかな光しか出していない心との向き合い方

 堀 義人=グロービス経営大学院学長、グロービス・キャピタル・パートナーズ代表パートナー

仕事においては、やはりカラダが資本。多忙な中でも最高のパフォーマンスを発揮し続けるには、日ごろからの健康管理が欠かせない。
一流人が実践する健康マネジメント術を紹介する本コラム、グロービス経営大学院学長で、グロービス・キャピタル・パートナーズ代表パートナーも務める堀義人さん(53歳)の最終回だ。
体の健康は心の健康とつながっている。競争が厳しいビジネスの世界に身を置きながら、堀さんはいかにして心の平静を保っているのか。話を聞いた。

体の健康のためには心の平安が必要

体の健康のためには、心のストレスをいかに減らすかが大事。
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 以前、取材で「あなたにとって何が一番大事か」と質問されたことがあります。「一番大事なのは、心の平安とマインドフルネス」と僕は答えました。これらはもちろん、体の健康にもつながります。

 いつも心が平静な状態を保てるようにするためには、自分なりの哲学を持つことが大切だと思います。生きている意味は何か、心の健康とはどういうものかなどを自分なりに考え、自分なりの方法論を持つことでしょう。

 僕自身は陽明学の考え方が好きです。陽明学とは、中国の明代に王陽明がおこした儒教の一派で、心を陶冶(とうや)する、鍛えることの大切さを主張した教えです。

 「心即理(しんそくり)」「知行合一(ちこうごういつ)」などを主要な思想としています。「心即理」とは心は即ち理であるということ、「知行合一」は、知ることと行うことは同じことであり実践を伴わなければ本当に知っていることにはならないという思想です。

自分の心を知る方法とは

 僕は心と頭と行動が一気通貫していることが重要だと思っています。言っていることとやっていることが違ったり、思っていないことを言ったりすると、それが嘘だとばれてしまう。自分の心のあるがままを言葉にして、それが行動になるのが一番いいですよね。

 そのためには自分の心を知らなければなりません。ところが多くの場合、自分でも自分の心が分からないものです。心を見ようと思っても、なかなか見えにくい。なぜなら邪魔するものがあるからです。

頭で考えすぎたり、欲にとらわれると、自分の心が見えなくなる。
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 1つには頭。頭で考えすぎると、どうしても心が見えなくなってしまいます。もう1つは欲です。権力欲や出世欲、名声欲、金銭欲などにとらわれていると、それが邪魔して自分の心が分からなくなります。

 僕は、心はほのかな光しか出していないものだと思っています。ほのかな光しか出ていないから、目を凝らして見ようと思っても、ギラギラした欲や、頭で考えたロジックが邪魔して見えにくいですね。

 だからそういうものを削ぎ落としたり、外したりしていくための作業が必要なのでしょう。僕の場合は座禅や瞑想、呼吸法などを実践して、本心では自分がどう思っているかを客観的に感じ取る機会を習慣的につくっています。

心と頭と行動が一気通貫していないと体もやられてしまいます。
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 自分の心が分からないと、心に沿った実践ができないから、知らないうちに自らを抑圧していることが多い。本当にやりたいことは別にあるのに、頭で「僕はこうしたいと思っているに違いない」と考える。そうするとストレスが溜まり、心の健康が損なわれ、体もやられてしまいます

 体の健康のために大切なのは、心のストレスをいかに減らすかということだと思います。そのためには自分の心を知ること。それが分からないと、何が心に負荷をかけているのかつかめず、取り除くこともできません。

 自分の心がどういう想いを持って、どのように感じていて、欲しているのかを分かること。それは簡単なようでいて、難しい。時間をかけて、自分の心を察知する力を鍛えていくことが重要なのでしょう。


(まとめ:荻島央江=フリーライター/インタビュー写真:鈴木愛子)

取材を終えて

 週3回、最低1000メートル泳ぐ、腹筋は毎朝100回、9階のオフィスまで階段を1段抜かしで上がる……。どれもよほど意志の強い人にしかできない芸当だと思う。しかも多忙を極める堀さんが実践しているというのが並ではない。

 だからインタビュー中、堀さんに「ストイックにやるのが好きなのか」と聞いてみた。するとご本人はストイックにしているつもりはなく、「楽しんでやっているだけ」と言う。堀さんにはどんなことも楽しめる才能があるのだろう。

 趣味のスノーボードで、グランドトリックについて手持ちのボールペンをくるくる回しながら話す姿は目がキラキラ輝き、とても楽しそうだった。(荻)

堀 義人(ほり よしと)さん
グロービス経営大学院学長、グロービス・キャピタル・パートナーズ代表パートナー
堀 義人(ほり よしと)さん 1962年、茨城県出身。京都大学工学部卒業後、住友商事に入社。91年、ハーバード大学経営大学院修士課程修了(MBA)。92年、グロービスを設立し、代表取締役に就任。99年、ベンチャーキャピタル事業を手掛けるエイパックス・グロービス・パートナーズ(現グロービス・キャピタル・パートナーズ)設立。2006年、グロービス経営大学院を開学。学長に就任。