日経グッデイ

私の「カラダ資本論」

私が「余命」をカウントダウンする理由【GMO熊谷社長】

第2回 残された盛年寿命を充実したものにするために

 熊谷正寿=GMOインターネット会長兼社長・グループ代表

仕事においては、やはりカラダが資本。多忙な中でも最高のパフォーマンスを発揮し続けるには、日ごろからの健康管理が欠かせない。
一流人が実践する健康マネジメント術を紹介する本コラム、昨日に引き続いて登場するのは、GMOインターネットグループ代表の熊谷正寿さんだ。
熊谷さんの考える健康管理のポイントは、「食事」「睡眠」「運動」「管理」「ポジティブシンキング」の5つ(第1回「『1000人に1人』のカラダはこう作っている」を参照)。そのうちの睡眠について、熊谷さんが特に意識しているのは「リズム」だ。

 睡眠時間は最も長寿になるといわれる「7.5時間」を目標にしています。睡眠はよく、浅い眠りのレム睡眠と、深い眠りのノンレム睡眠のリズムから、1.5時間ごとのサイクルでとるのがいいといわれています。目標の7.5時間は、1.5時間×5サイクルになりますね。ただ、現実的には多忙で難しく、実際の睡眠時間は、4サイクルの6時間程度です。それでも、目標を持つことが大切だと思っています。

 足りない1.5時間を少しでも補うために、移動の車内で仮眠をしたり、オフィスで短時間の昼寝をすることもあります。眠るときには、より良い睡眠がとれるように、暗く静かな環境を作ることを心がけています。そのために、オフィスや車、自宅のベッドサイドにはアイマスクを常備。耳栓も用意しています。

「出張時にも耳栓やマスクは、必ず持参しますよ」
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海外出張では睡眠の工夫で時差ぼけ予防

 海外出張時に現地で最大のパフォーマンスを発揮するためにも、睡眠の工夫がカギになります。当社の特別顧問で医学博士の根来(ねごろ)秀行先生は、米ハーバード大学や仏パリ大学などで客員教授を務められ、内科学のほか、睡眠医学や抗加齢医学、長寿遺伝子や時計遺伝子を専門とされています。そんな根来先生から、時計遺伝子によって働く体内時計を整えて、時差ぼけを予防する方法を教えていただきました。

 時計遺伝子は脳の視交叉上核(しこうさじょうかく)という場所にあるほか、全身の細胞のほぼ一つひとつにもあることが分かってきているそうです。脳にある時計遺伝子が親時計だとすると、体の細胞が持つ時計遺伝子は子時計で、連携を取りながら、体内時計を調整しています。この体内時計は、簡単に言ってしまうと、光の刺激や食事によってリセットされるのだとか。いわば「光時計」と「腹時計」ですね。ですから、海外へ出かけるときは、移動先の現地時間に合わせた睡眠や食事をとることが大切で、時差ぼけの予防や改善に役立ちます。

 例えば、日本から右回り(東/アメリカ向き)に移動するときは、なるべく空腹にしてぐっすり眠る。左回り(西/ヨーロッパ向き)に移動する場合は、仕事をするなどして眠らずに、起きているようにしています。そして、現地の時間に合わせて食事をすると、時差ぼけにはなりにくいようです。

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会社でもスタッフ用のお昼寝スペースやマッサージルームを設置

エクセルで余命をカウントダウン

 私は人間には、3つの寿命があると考えています。1つは生物としての「命の寿命」。もう1つは自立した生活が送れる「健康寿命」。そして、精力的に仕事ができる「盛年寿命」です。

 今、日本人男性の平均寿命は80歳を超えています。そのうちの健康寿命は10歳程度下回る70歳前後です。さまざまな経験を積んだ60代、70代は、きっと、存在意義のある素晴らしい生活が送れるでしょう。

 ただ、体力や気力の衰えは、避けられません。精力的に仕事に取り組めるのは、40代、50代頃までではないでしょうか。そういう意味では、52歳を迎えた自分の盛年寿命はカウントダウンに入っているため、限られた時間をより強く意識するようになりました。

 私は20歳のころに大きな夢を実現しようと決意したときから、絶えずやりたいことが山のようにあり、いつも時間はいくらあっても足りないと思っています。そのため、限られた時間とその価値を強く意識しようと、エクセルで日本人男性の平均寿命までの日数を自動的にカウントダウンする表を作って、確認するようにしています。

 日本人はよく「お忙しいところ、お時間をいただきありがとうございます」と挨拶をしますよね。これは実は、互いの時間、つまり命をもらっているということなのです。ですから、講演をするときなどにはまず、「みなさんの時間、命を無駄にしないように、自分の経験や知識を精一杯お話します」と伝えています。残された盛年寿命を充実したものにするためにも、健康管理は重要で、まだまだ勝負していきたいと思っています。


(まとめ:田村知子=フリーランスエディター/インタビュー写真:的野弘路)

熊谷正寿(くまがい まさとし)さん
GMOインターネット会長兼社長・グループ代表
熊谷正寿さん 1963年7月長野県生まれ。91年ボイスメディア(現GMOインターネット)設立。95年からインターネット事業を開始し、99年に独立系のインターネットベンチャーとして国内初の株式店頭公開。2005年東京証券取引所第1部に指定変更。現在、GMOインターネットグループは上場企業8社を含む86社、スタッフ数は4400名以上に成長(2015年6月末時点)。「すべての人にインターネット」を合言葉に、インターネットインフラ事業、インターネット広告・メディア事業、インターネット証券事業、モバイルエンターテイメント事業を展開している。