日経グッデイ

私の「カラダ資本論」

ブラジルで目覚めた食事管理の大切さ【味の素 西井社長】

第2回 1日10種類を食べて健康に

 西井孝明=味の素社長

様々な分野で活躍する一流人が実践する健康マネジメント術を紹介する本コラム。今月は、味の素の西井孝明社長に登場していただいている。世界130を超える国と地域にネットワークを拡げるグローバル企業のトップである西井さんは朝、14階の社長室へは階段を使って入り、執務時にはほとんど立ったまま。それで下半身の筋力を維持して、多忙極める仕事をこなしているという。では、そんな西井さんは体づくりの素となる栄養についてはどう考え、そして実践しているのだろうか。今回は食を通して社会の健康に貢献している企業のリーダーの食事法について語っていただいた。

 食事に関してはもう、本当に仕事みたいなもので、1日3度でどうやって栄養とカロリーのバランスを整えるかということを常に考えていますね。

 例えば、弊社がネーミングライツ契約をしている東京都北区の味の素ナショナルトレーニングセンターで提供されている食事は、通称“勝ち飯”と呼ばれています。ここはトップアスリートのための施設で、柔道や卓球などの多くの日本を代表する選手が体を鍛えています。

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 種目によって「勝てる体」は異なるので、それぞれに合った食事を提供しています。これは私たちの「ビクトリープロジェクト」というアスリートに対するサポート事業で掲げる“勝つための体を作る”という考え方に基づいているのです。

 このコンセプトはトップアスリートだけでなく、一般の方々の体にも当てはまります。私も自分に合う食べ方を考えて、1日の摂取カロリーを調整しています。

 食事に気を付けるようになったのは、2年間のブラジル単身赴任経験が大きいですね。向こうの料理はとにかく塩と砂糖を大量に使うんです。確かブラジル人1人当たりの砂糖の年間消費量は、50kgを超えていたと思いますよ。1週間に約1kg消費している計算です。ブラジルでは総じて料理の味付けが濃かったですね。

 一時帰国した時に、自宅で食べる食事の味が薄く感じてしまったことがありました。気が付かないうちに濃い味付けに慣れてしまい、つい塩をかけてしまって。すると娘から「お父さん、何でお塩かけているの」と言われて、途中で「ああ、味覚が変わってきているんだな」と気づかされました。

 それからスマートフォン(スマホ)のアプリで食事管理をするようになりました。アプリを使ってみて分かったのは、毎日食べるものが違っても、ご飯やパンなど炭水化物や、野菜、肉、魚、果物の総摂取量というのは、1週間や1カ月の単位でみるとそれほど変わらないということです。

 現在ではアプリに頼らずとも、食事の内容を見ただけで、カロリーや栄養素がだいたい分かるようになりました。基本的にたんぱく質を十分に取るようにして、炭水化物を少なめにはしています。ただ炭水化物をゼロにすることはありません。完全に絶ってしまうと、様々な弊害が起こります。特にご飯やパンの代わりに肉や魚でエネルギーを取ろうとすると、塩分過多になりがちです。私なども生活習慣病予防を気にしなくてはいけないので、減塩は大切なんです。

 例えば、私は朝食は決まったものしか食べません。最初にボール1杯のサラダにポン酢をかけたものを食べるんです。それから小さなパンを一つ。そして目玉焼き1個にソーセージ、それに少しのフルーツ、それでおよそ650kcalです。昼食は社内の食堂で取ることができれば、だいたいヘルシーメニューですね。一例としては、麺類とサラダなどで800kcal以内に抑えるようにしています。

宴席ではお酒と一緒に水を飲む

 夜は宴席、会食が多いのですが、できる限り油脂分を取らないように気を付けていますね。それからお酒と一緒に水を飲むと、アルコールの摂取量を抑えられますよ。これは絶対にお勧めです。よく和食を召し上がる方は、お水のことを“やわらぎ”などと呼びますが、これは良い言葉ですよね。本当に体に優しいですよ。また週末など天気の良い日に「ああ、ビールが飲みたいな」と思った時は、僕は強めの炭酸水を飲むようにしています。そうすると意外と、すっと癒やされます。

 食事に関していえば、我々の研究部門では毎日10種類の食べ物を口にするよう「TAKE 10」という記録シートを作って配布しています。これは、毎日食べたものに丸印をつけて簡単に記入できるようにしたものです。そうすると、食事の偏りが分かるんです。私どもが包括契約をしている東京都北区のシニアなどに利用してもらっています。地元のスーパーさんとも提携して、「TAKE 10」に合う食材を推奨して売っていただくような取り組みもしています。「TAKE 10」のシートを使うと、若い方も食事を自己管理できますよ。

(まとめ:松尾直俊=フィットネスライター/インタビュー写真:村田わかな)

西井孝明(にしい たかあき)さん
味の素 社長
西井孝明(にしい たかあき)さん 1959年奈良県生まれ。1982年、味の素入社。2004年に当時は不振だった家庭用冷凍食品事業の責任者となり、業績を改善。09年に人事部長に就任し、11年に執行役員人事部長に。13年にブラジル味の素の社長に就任。ラテンアメリカ本部長として南米に駐在。15年に創業家を除き、味の素史上歴代最年少の55歳で代表取締役社長に就任、現在に至っている。