日経グッデイ

私の「カラダ資本論」

毎朝、階段で14階の社長室へ【味の素 西井社長】

第1回 仕事中も足腰の筋力維持

 西井孝明=味の素社長

様々な分野で活躍する一流人が実践する健康マネジメント術を紹介する本コラム。今月は食と健康、そしてより良い生活に貢献する、味の素の西井孝明社長にお話を伺っていく。同社は終業時間を午後5時20分から午後4時30分に前倒しするなど働き方改革を進めており、『健康経営優良法人2018』にも認定されている。世界130を超える国と地域にネットワークを拡げるグローバル企業のトップである西井さんは、どのような健康マネジメント術で激務をこなしているのだろうか。1回目は、執務中に行なっている、密かな健康術について聞いた。

 弊社の正式な始業時間は午前8時15分ですが、私は7時前には14階にある自分の部屋に入るようにしています。その時、毎日エレベーターではなく階段で行くようにしています。まあ、(二日酔いの朝以外は)、というカッコ付きですが(笑)。段数にして312段、正直言って少々キツイのは確かで、夏場は結構汗をかきますよ。でも、最低限これくらいは動かないとダメだと思っています。

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 社長に就任する前、私はブラジルに単身赴任していました。当時住んでいたアパートの中にはスポーツジムがあり、割と早く帰れた時や週末の休みには、そこで走ったり、泳いだり、トレーニングしたりと体を動かしていたました。ところが、帰国して2015年に社長に就任した後、移動がほぼ100%、社用車になってしまって自分自身で如実に運動不足を感じるようになりました。それにトレーニングに割ける時間もあまりありません。何か運動しようにも、最初は階段を使うことくらいしか思いつかなかったのです。

 もともと弊社では、前社長の頃から「2 Up 4 Down」というキャッチフレーズのもと、2階程度上がる、または4階程度下るのであれば、階段を利用しようということを推奨していました。社長に就任してから2~3カ月すると、これは私が指示したのではないのですが、階段の踊り場には当社のキャラクターであるアジパンダの絵が登場しました。元気が出るメッセージが一緒に書かれています。2 Up 4 Downの一環で、階段の昇り降りが楽しくなるようにと人事部が中心となって設置してくれたのです。

 それまでは何にもない、殺風景な通路を延々と歩いていたのですが、今は楽しくなりましたよ。それに1階から屋上まで、階段には段数が振ってありますから、自分がどれくらいの段数を登ったのかわかるのも励みなります。ちなみに、1階から屋上まで行くと340段になります。

 年齢を重ねると下半身の大きな筋肉を動かして、筋量を維持したほうがいいと言われていますが、僕はこの階段登りのおかげで、以前と変わらない筋肉を維持できているのだと思います。

社長室での執務、立ったままで

 社長室に到着しから1時間くらいは、ゆっくりと自分のための仕事に取り組みます。ミーティングの類は、8時半以降に入れるようにしています。それからは切れ目なしに、いろいろなスケジュールが入ります。

 ただ、社長室にいてパソコンを使っての調べ物やメールの返事などをする時は、すべて立った姿勢でやっています。高さを調整できる台を買ってもらって、パソコンを使う時は、それをひょいと持ち上げて高くするんです。それで立ち上がって仕事をしますから、椅子に座っていることがほとんどないのです。

 書類を読んだり、それにサインをしたりという、どうしても机を使わなければいけないこと以外は椅子に座ることがありません。ですから、たぶん1日4時間以上は立っていますね。社員が「社長、ちょっといいですか」と用事で入ってきた時には、僕は立ったまま後ろ向きで仕事をしているので、「何ですか?」と振り返る感じです(笑)。

 立って執務をすることを始めたのは今年からです。座って仕事をしていた時には、姿勢が崩れて肩が凝ることがあったのですが、今では全くなくなりましたね。きっかけは昨年、米サンディエゴの子会社を訪ねた時、そこの社長が同じように立って執務をしていたからなんです。「どうして?」と聞いたら。「こうすると、集中できるから仕事が早くこなせるし、足腰にもいいから」と言うんです。

 やってみると、確かにいいんです。脚の筋肉の良い意味での張りも維持できます。ふくらはぎと太ももがしっかりしてきました。腰には、学生時代に運動で傷めたヘルニアが少しあるんですが、それも痛みが出なくなりました。やっぱり人間は、もともと持っている筋肉を動かしたほうが健康になれるのだと思います。

ジムで一汗かいてから楽しく会食

 弊社は終業時間を午後4時半に設定しています。そして午後6時や6時半くらいから、仕事関係の会食が入ることがあります。この間に本社の近くのスポーツクラブに行って、1時間ほど必ず体を動かすようにしているんです。最低でも週2回、だいたい3~4回は通っていますね。種目はその日によって違いますが、筋トレやストレッチ、ランや水泳など、1回にどれか一つはこなすようにしています。

 30分から1時間、集中してトレーニングをしてシャワーを浴び、身だしなみを整えて宴席に出発です。そのほうが良い話し合い、会合ができるんです。ジムに通う以前は、終業してからの時間を“勉強”と称して、仕事の延長線上の調べ物や次の日の準備に充てていたのですが、それがストレスになっていたのかもしれません。ジムで体を動かしてリフレッシュして素で臨んだほうが、確実に良い仕事ができますね。

 最近は日本企業の間でも少しずつ増えてきたようですが、僕はこの本社の中に、全社員がいつでも自由に使えるジムを作りたいんですよ。私たちの海外のパートナー会社の中には、社内にジムを備えたところがあります。それで時間制で社員がトレーニングしたり、リラクゼーションしたりできるようになっているんです。みんなに社内にジム作りたいと言うと、ワァーと笑ってくれるけど、誰も本当にできるとは思ってくれない。けど私は本気ですよ(笑)。

(まとめ:松尾直俊=フィットネスライター/インタビュー写真:村田わかな)

西井孝明(にしい たかあき)さん
味の素 社長
西井孝明(にしい たかあき)さん 1959年奈良県生まれ。1982年、味の素入社。2004年に当時は不振だった家庭用冷凍食品事業の責任者となり、業績を改善。09年に人事部長に就任し、11年に執行役員人事部長に。13年にブラジル味の素の社長に就任。ラテンアメリカ本部長として南米に駐在。15年に創業家を除き、味の素史上歴代最年少の55歳で代表取締役社長に就任、現在に至っている。