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私の「カラダ資本論」

逃げてはいけないストレスが成長させてくれる【秦アンディ英之氏】

第3回 現役引退試合のスタジアム風景を忘れない

 秦アンディ英之=ONE Championship

現役引退試合のスタジアム風景がストレスをエネルギーに変換する原動力

 そのきっかけになっているのが、先ほど言った、チームが日本一になったライスボウルにあります。正直言って、まだまだ続けられる年齢でした。現役の良い部分は、生モノでありこれから成熟して、ベテランに登っていく段階です。そのときは、ここまでやれば日本一になれるんだ、逆に、ここまでやらないと日本一にはなれないんだという気持ちが交錯していました。そのリミッターが両方とも外れてしまった感じだったんです。

 話は前後しますが、ライスボウルはそれまで毎年、満員のお客さんが入っていたんですが、なぜかその年はガラガラ。半分くらいしか入っていないんです。その頃はいろいろなエンターテインメントが広がったり、アマチュアスポーツ、特に企業スポーツのチームがなくなったりしていました。たぶん、運営側の基盤が弱くなっていたんです。スポーツビジネス業界では危機感を持ち始めていた時代でした。

 ソニーに入ってから一緒に多くの仕事をしたのは、モノ作りのエンジニアの人々でした。彼らの製品開発への情熱って、すごいんですよ。そんな情熱を注げる仕事をしたいと思っていたんです。スポーツで育ってきた自分にとっては、将来やりたい事業というのは、やっぱりスポーツ。ただビジネスとして語る以上は、現場も知らず、業界も知らずに飛び込んで行くのは怖いなと思って、実は現役を続けているかたわら、スポーツビジネスに興味を持っている人たちのサロンのようなものを始めていたんです。

 前置きが長くなってしまいましたが、スタジアムのスタンドを見上げたときに、「選手がこれだけ頑張っているのに、ご褒美がこんなことでは一番寂しいパターンだな」と感じたんです。これから上がってくる若い世代のスポーツ選手たちに夢や希望を与えるにためには、日本のはスポーツ産業の基盤が弱すぎる、自分がしっかり作り上げたいという思いが強くなりました。そこで、後の夢は同期のうまい選手たちに託し、自分は裏方に回ってスポーツ界を盛り上げたいと引退を決めたんです。本音は、実はもう1年やりたかったんですけどね(笑)。

 子供のときから大好きで続けてきて、それなりの場所までたどり着けたスポーツを捨てる行為は、正直言って重たい決断でした。ただ、それくらいの決意で現役を引退したんで、今ではその部分が誰にも否定できない原動力になっているんです。

 ですから、どんな壁にぶつかっても、自分の中では「そんな軽い気持ちで辞めたっけ?」となるんです。なぜなら、一生戻ってこない時間を犠牲にしてるので、後悔とかいう次元ではなく、それだけ思いを込めて今の仕事をやっているから、ストレスやプレッシャーを前向きのエネルギーに変えられる原動力になっていると思います。

 僕がワン・チャンピオンシップに移ったときに「何で?」「大丈夫?」と言われたと言いましたが、まだ日本には格闘技とスポーツに一線を引くような雰囲気があります。しかし全世界に潜在的視聴者27億人のワン・チャンピオンシップには、その垣根をなくすノウハウやパワーがあり、それを日本のスポーツビジネス界が学べば、これからもっと発展していけると考えています。

(まとめ:松尾直俊=フィットネスライター/写真:村田わかな)

秦アンディ英之(はた アンディ ひでゆき)さん
ONE championship日本代表取締役社長
秦アンディ英之(はた アンディ ひでゆき)さん 1972年生まれ。少年時代は日本とアメリカを行き来する生活を送る。日本の高校を卒業後、明治大学法学部に入学。同時にアメリカンフットボール部に所属して活躍。東西学生オールスター戦の関東代表選手にも選出された。1996年、大学卒業後にソニー入社。同時に母校のコーチを1年間務めた。1997年からはソニー勤務と並行して、社会人アメリカンフットボールの名門、アサヒビールシルバースターに入団し、社会人選手権や、大学優勝校と戦って日本一を決めるライスボウル(日本選手権)で優勝。1999年、26歳で現役を引退。ソニーでは、FIFAとサッカーW杯の2010年南アフリカ大会、2014年ブラジル大会でのパートナーシップや全世界を束ねる広告戦略などを担当。2013年にスポーツ専門の調査コンサルティング会社、ニールセンスポーツの日本法人および北アジア地域代表に就任。2018年12月、ONE Championship日本代表取締役社長に就任。2020年2月、Jリーグ特任理事にも就任。

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